(※写真はイメージです/PIXTA)

いま中小企業の後継者不足は深刻化しています。「社長の年齢が60代の中小企業のうち、約半数は後継者が決まっていない」(『中小企業白書』2020年版)といいます。事業を引き継ぐ人がいないということは、事業が安定していても廃業になる会社も存在するということです。後継者はどのように育成していけばいいのでしょうか。

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M&A後、工場はマンションの建設工事

■実は「土地が欲しかっただけ」というケースも

 

もう一つ、悲しいM&A事例を紹介します。

 

下町の工場がM&Aをしました。数ヵ月後、工場は閉じられ、そこではマンションの建設工事が始まりました。

 

買い手は不動産会社だったようです。単に工場の広大な土地が欲しかっただけで、買収した事業や人材に興味などなかったのです。まったくもって、事業承継の体をなしていないM&Aです。

 

工場で働いていた人たちは、退職金をきっちり出して辞めてもらったのかもしれません。あるいは、再就職先を手配したのかもしれません。元社長に見放され、買収直後にさっさと追い出され、社員たちは惨めな気持ちになっていると思います。

 

いずれにしろ、この買い手は、残った土地の運用が狙いだったわけです。

 

会社そのものがなくなってしまい、手放した元社長はどのような思いだったのかも分かりません。こうなることが分かっていれば、M&Aはとどまっていたかもしれません。

 

このような例も考えられるのですから、 残された社員の幸せを考えながらM&Aをするのであれば、売り手に「買収後、会社をどのように経営していくのですか」と確認するべきです。「買収後のことは、あなたには関係ないから」というような返事をされるところには、事業承継するべきではありません。ここで紹介したような悲しい結末が待っているだけです。

 

藤間 秋男

TOMAコンサルタンツグループ株式会社

代表取締役会長

 

 

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※本連載は藤間秋男氏の著書『社長引退勧告 1年以内に次期後継者を決めなさい』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、再編集したものです。

社長引退勧告 1年以内に次期後継者を決めなさい

社長引退勧告 1年以内に次期後継者を決めなさい

藤間 秋男

幻冬舎メディアコンサルティング

「社長の年齢が60代の中小企業のうち、約半数は後継者が決まっていない」――中小企業庁が発行している「中小企業白書(2020年版)」のデータです。 事業を引き継ぐ人がいないということは、たとえ経営が安定していても、廃業も…

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