「社長が独裁者タイプ」は社員が定着しない
■人が定着しない企業は長生きできない
「社員がすぐ辞めてしまい困っている」
という相談を会社の社長からよく受けます。
給与や拘束時間など、諸々の労働条件は健全で、働きやすい環境を提供しているはずなのに、なぜか社員が定着してくれないというのです。人が離れてしまうと当然売上にも響いてしまい、たとえ事業自体が安泰で前途洋々の兆しがあっても、このままでは人材不足で倒産してしまいます。
そのような、一見すると「なぜ人が離れてしまうのだろう?」と首を傾げたくなる、不思議な悩みが寄せられるのです。
しかし、社長から詳しく会社の様子を聞き出してみると、社員が定着しない理由が明確となります。
「社長、あなた、独裁者ですよ!」
と、社長に主張したくなるのですが、心のなかで思うのみです。言ったところで、社長には独裁者の自覚がないので、まったく無意味であることを知っているからです。社長が独裁者タイプ。人が離れやすく、短命に終わってしまう残念な企業最大の特徴は、まさにこれなのです。
■とある独裁者タイプ社長の場合
社員100人ほどのとあるメーカーでは、年々従業員数が減り、売上も下降気味です。
このメーカー社長は、「社員に口出しせずにはいられない」という、典型的な独裁者タイプでした。社員が言うことやることにいちいち文句をつけ、自分の思いどおりに事が進まないと叱責の嵐です。
いかに社長から命じられたとおりに社員が事を進めていても、良い結果が出ていなかったら、社長は社員を叱りつけます。
「社長に言われたとおりにやっただけなのに」と、 叱られる社員にとってはまったく面白くはありません。当然のことながら、社員が責任感を持って仕事に取り組むことはありませんし、ただただ社長の叱責に耐えるだけで、何の変化や成長もないまま、同じことを延々と繰り返すだけの業務になります。
とにかくこの社長は、自分の思いどおりにならないと気が済みません。ですから、社長を取り巻く役員連中は、社長の言うことに対してひたすら首を縦に振るだけの、イエスマンばかりがそろっています。