(※画像はイメージです/PIXTA)

「後継者がいない、育てていない」は社長のタダ言い訳にすぎず、社長失格だと藤間秋男・TOMAコンサルタンツグループ会長は指摘する。社長の本業は社員の育成で、育成がうまくいけば、その会社は「継ぎたい会社」となり、社内外問わず後継者候補が自然と出てくるようになるという。

M&Aの前に挑戦したい事業承継プロセス

■「残すべきものはお金なのか?」

 

ここまで事業承継の一つであるM&Aについて、社員が不幸になってしまう事例や後悔しないためのポイントなどを説明しました。

 

事業承継は、M&Aに安易に走るのではなく、社内で正統なプロセスを経て、じっくり時間をかけて成し遂げてほしいものです。

 

実をいえば、私のところにも、以前アメリカの大手会計事務所からM&Aの話が舞い込んできたことがあります。当時の私は60代に差し掛かっていて、後継者探しに余念が無いころでした。その情報をキャッチしての打診だったと思われます。

 

その買収金額たるや、相当の額でした。これまで頑張ってきた成果を、目が丸くなるような金額で提示していただけたことは、なんとも報われる思いを抱いたものです。

 

しかし額面を前にして、冷静になって自分自身に問いかけたのです。「残すべきものはお金なのか?」と。

 

社員みんな一丸となり、一生懸命頑張ってここまで大きくしてきた会社です。

 

一緒にやってきた同志のことを考えず、お金だけもらって、本当にそれでいいのだろうか。

 

お金はお墓に持っていけるわけではありません。お金を残すよりも、もっと大切なものを残すべきではないか。本当の幸せはお金にはないはずだ。

そのような結論にたどり着きました。

結果、私はM&Aを断り、事業承継のための後継者探しにさらに力を入れ始めたのです。

 

それでももし後継者が見つからず、私の年齢が70を過ぎてタイムリミットが迫ってきたときは、改めてM&Aを考えようと決めました。

 

■「後継者がいない、育てていない」はただの言い訳

 

「事業承継をしたい」と私のところへ相談される社長にお会いしたとき、まず私はこのようにお聞きしています。

 

「社長、後継者の候補はいますか」

 

相談に来られるくらいですから、多くの方がこの質問に「ノー」と回答します。そこで次の質問です。

 

「では、後継者の候補が見つかるよう、具体的な施策や、社員の育成を実践していますか」

 

これに関しては、「ノー」と答える社長もいれば、「自分なりにやっている」「やろうとはしている」などと答える社長もいます。

 

加えて社長から、次のような「言い訳」もついてきます。

 

「毎日の社長業が忙しくて、後継者を見つけたり、育てたりする時間が確保できていない」

 

このようなことを言っている時点で、 社長失格です! 面と向かってそのようには申し上げませんが、 私は即座に「ではこれから、 1年以内に後継者を決めるための計画づくりを始めましょう」とご提案します。

 

次ページ理念は会社を長く存続させるためには必須

※本連載は藤間秋男氏の著書『社長引退勧告 1年以内に次期後継者を決めなさい』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、再編集したものです。

社長引退勧告 1年以内に次期後継者を決めなさい

社長引退勧告 1年以内に次期後継者を決めなさい

藤間 秋男

幻冬舎メディアコンサルティング

「社長の年齢が60代の中小企業のうち、約半数は後継者が決まっていない」――中小企業庁が発行している「中小企業白書(2020年版)」のデータです。 事業を引き継ぐ人がいないということは、たとえ経営が安定していても、廃業も…

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