フライパン100記事を書いて奇蹟が起きた
フライパンのネタだけで100記事ほどを発信したころ、藤村さんが言っていた〝奇蹟〞が起きました。「日経トレンディネット」という情報サイトから、「記事を書いてみませんか?」と声がかかったのです。
年末は料理道具を新調して新年を迎えたいというニーズもあり、フライパンの需要が高まります。そこで、フライパンの記事を書いてほしいというのです。今まで実際に試して比較してきた内容を、ここはチャンスとばかりに気合を入れて記事に書きました。
すると、奇蹟はさらに続きます。記事が話題となり、日本全国に拡散されていったのです。ものすごく評判がよかったそうで、今度は「料理道具の連載記事を毎月書きませんか?」と、さらに次のチャンスをいただけたのです。
〈合羽橋「台所番長」が斬る〉というタイトルで、さまざまな料理道具を徹底的に比較した連載記事を書きました。テーマを決めると、さらに新しい商品を仕入れて使い比べたりもしました。
今までの知識に加えて、メディアで発表させてもらえる機会を与えられてさらに多くの知識を身につけられたことで、より多くの人に役に立つ情報をお伝えしたいという気持ちが強くなっていくのでした。
■ついに「料理道具の聖地」へ
連載記事では、「季節の便利グッズを紹介してほしい」と依頼されることもありました。そんなとき、知識が足りない分野はそれを補うように商品を仕入れ、使ってみてはさっそく記事に書き、よかった商品は仕入れて売場に反映させていきました。
店で接客のために調べたり、自分で使って得た知識は連載記事で役立ち、連載記事のために調べた知識は逆に接客の際に価値を発揮したのです。
料理道具の知識や仕入れノウハウは本来、それぞれの料理道具店に蓄えられた門外不出の情報です。だから、今までにその情報を公開する店はありませんでした。
ならば飯田屋は違う道を行きます。
飯田屋独自に蓄えていた料理道具の選び方や仕入れノウハウ、世間で人気を博している道具のいい点はもちろん、道具屋目線で使いにくいポイントなど、料理道具に関するあらゆる知識をすべて無料で配信したのです。