一部の中学受験が過激になっている
「少子化にもかかわらず、中学受験者数は増えている。競争が激化し、教育虐待などが起こる原因になっている」
そんな報道がされることがあります。
たしかに中学受験者数はこの数年増加傾向にあります。そしてたしかに一部で中学受験が過熱、いや過激になっているのは事実です。でも、少なくとも首都圏においてこの10年くらいは中学受験全入(全員入学)時代だったのです。総募集人数が総受験者数をずっと上回っていました。つまり、そんなに必死にならなくても、どこかには合格できるはずなのです。
中学受験の過激化の原因を、受験者数の増加で説明するのは間違いです。原因をすり替えてしまうと、過激化する中学受験によって子どもが潰れてしまう悲劇を防止することはできません。大手メディアのフェイクニュースにだまされないでください。あらためて状況を俯瞰してみましょう。
2020年、首都圏の小学6年生のうち私立・国立・公立の中学を受験する児童の数が年間どれくらいだったか知っていますか? 首都圏模試センターの推計によれば、4万9400人です。2014年から6年連続で増加しています。
でも2007年には5万500人、2008年は4万9000人でした。そこから2014年まで毎年中学受験者数が減り続け、2020年にようやく2008年レベルまで回復しただけです。
ところで、この数字の推移を見て、どんな要因で中学受験者数が増えたり減ったりするのかがわかりましたか? そうです。景気です。2008年のリーマンショックをきっかけに、中学受験者数は減少していたのです。いったんは落ち込んだ株価が上昇するにつれて、中学受験者数も増加し始めました。
ただし、男女別に分けると、見える風景がちがいます。2019年の総合格率は100.1パーセントで需給がほぼ釣り合った状態でしたが、女子の総合格率が111.3パーセントだったのに対し、男子の総合格率は89.7パーセントだったのです。
少なくとも手元の資料によれば、2018年以前、女子の総合格率は120パーセントを超えています。でも、男子の総合格率は一度も100パーセントを超えていません。2020年の男子総合格率は86.3パーセント、約7人に1人はどこにも合格できないという非常に厳しいものでした。男子の親御さんはこのことを肝に銘じ、志望校選びでは慎重を期すべきです。