(※画像はイメージです/PIXTA)

日本では少子化にもかかわらず、中学受験者数が増えて、競争が激化している――。これは本当のなのか。気鋭の教育ジャーナリストが中学受験の現状を解説する。※本連載は安浪京子氏、おおたとしまさ氏の著書『中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

与えられることに慣れすぎている新入生

一方、この原稿を執筆している現在、新型コロナウイルスによって世界は同時多発鎖国状態にあります。世界経済へのダメージはリーマンショックの比ではないでしょう。となると、おそらく2020年以降、ふたたび中学受験者数は減少します。またしばらく全入時代が続くはずです。

 

ではなぜ中学受験が過激化しているのか。一部の最難関校を目指す親子の間での競争が激化しているからです。たとえば男女御三家と呼ばれる最難関校の募集人数は合計で1340人。全体を見ればほぼ全入時代なのに、1340脚の椅子とりゲームに参加する親子の気合いが異常な熱を帯びているのです。特に親。中学受験が親の受験であると喧伝されすぎたからだと僕は分析しています。

 

本来ならやらなくていいことを間引いてやるのが親の役割であるはずが、フォアグラをつくるためガチョウに無理やり大量のエサを飲み込ませるのと同じように、あの手この手で子どもの限界まで勉強をやらせる「チキンレース」に闘志を燃やす親がいます。トップ校に合格できなかったらその時点でわが子の人生が終わってしまうかのような妄想にとりつかれているのでしょう。

 

その結果、近年、最難関校の先生たちは口をそろえて嘆いています。「最近の新入生は、与えられることに慣れすぎていて、自分から勉強する姿勢ができていない。過干渉な親も増えていて、子離れができていない……」。これでは子どもも学校も不幸です。

 

首都圏には約300の私立中高一貫校がありますが、それぞれに個性的です。数々の学校を取材してまわっている立場から言わせてもらえば、時代の荒波を乗り越えてきた私立の学校は、偏差値に関係なくどこも恵まれた環境です。入試の難易度を示す偏差値が10や20ちがったって、生徒たちが発する輝きは変わりませんし、どんな学校にもすばらしい先生がいます。

 

たかだか中学受験で人生が決まるはずがありません。「座れる椅子に座ればいい」くらいの気持ちで中学受験をとらえ直す必要があるのではないでしょうか。

 

Pointまとめ
● 中学受験者数は実はそれほど増えていない。いわゆる全入時代が続いていた。
● 男女の合格率に大きな差がある。男子は1つも合格がもらえない可能性がある。
● 偏差値に関係なく、ほとんどの私立中高一貫校は恵まれた教育環境である。

 

おおた としまさ
教育ジャーナリスト

 

 

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