(画像はイメージです/PIXTA)

複数の相続人がいる場合、自分の取り分を増やすため、あれこれとよからぬことを画策をする相続人が出現することもあります。しかし「悪だくみ」の内容が白日の下にさらされたとき、それを行った相続人は、どのような立場に立たされるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

遺言書を偽造した本人は欠格でも、子どもがいたら…

遺言書の偽造は、前記のとおり、相続欠格事由に該当しますので、本件でXさんがAさんの遺言書を偽造したとすれば、XさんはAさんの遺産について相続資格を失うこととなります。

 

Xさんは、遺言書の偽造をしなければ、遺産の合計3億6000万円の2分の1である1億8000万円を相続できたのに、遺言を偽造して遺産を独り占めしようとしたために、相続できなくなってしまったのです。

 

したがって、Xさんが遺言書の偽造をしても相続資格を失うことはないとする選択肢①は誤りです。

 

では、相続欠格事由がXさんにあり、Xさんが相続資格を失うとして、Xさんに子どもP君がいる場合はどうなるでしょうか。
 

民法は、887条で以下のように定めています。

 

民法887条2項

被相続人の子が、相続開始以前に死亡したとき、又は891条の規定に該当し、若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。

 

これは、代襲相続の規定で、死亡したときを例として説明すると、親の相続人となるはずの子どもが親よりも先に亡くなっていた場合は、子どもの子どもが親の相続人となるということです。

 

本件に当てはめると、Aさんが亡くなるまでにXさんが亡くなっていたときは、Xさんの子であるP君がAさんの相続人になるということです。

 

では、本件の相続欠格事由が子である相続人にある場合はどうかというと、最初にご説明したとおり、相続欠格事由は民法891条に定められています。

 

そして、代襲相続を定める887条2項には、「民法891条の規定に該当し、相続権を失ったとき」について規定があります。

 

したがって、相続人となる子どもに相続欠格事由があって相続資格を失ったとしても、子どもの子どもが代襲相続人として相続することとなるのです。

 

本件で言うと、Xさんは遺言書の偽造をしているので、Aさんの遺産について相続することはできませんが、Xさんの子どもであるP君は代襲相続人として相続することができます。

 

そこで、Xさんに子どもであるP君がいる場合は、Y子さんとP君で遺産を2分の1ずつ分けることとなり、Xさんに子どもがいなければ遺産はY子さんのみが相続することとなります。

 

よって、選択肢②は誤りで、選択肢③が正解となります。

 

法律は、Xさんが遺言書の偽造という悪事をしたとしても、その子どもには罪がないという扱いなのだと思いますが、Xさんが遺言書の偽造により相続資格を失ったとしても、その子どもであるP君が相続できるのであれば、Xさんにとってあまりペナルティとなっていないように思われます。

 

ただ、法律上は、相続欠格事由がある場合は代襲相続原因となっているので、代襲相続がなされることとなります。

 

 

高島 秀行

高島総合法律事務所

代表弁護士

 

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