1.はじめに
コロナ禍の不動産市場では、賃貸マンション、物流施設、開発用地への投資が活発になってきている※。なかでも賃貸マンションに対する国内外の機関投資家等の投資姿勢は積極的である。注目度が高まっている賃貸マンションについて、売買、賃貸、建設の3面から賃貸マンション市場を確認し、今後を考えてみたい。
※渡邊布味子『2020年度(20年4月~21年3月)の不動産売買市場を振り返る~大規模緩和と外資流入で取引額の落ち込みを回避~』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021年07月06日)
2.賃貸マンションの売買取引が増加している
Real Capital Analyticsによると、賃貸マンションの売買取引(1取引当たり1千万ドル以上)は、2019年度には約6,700億円(前年比+78%)であったが、2020年度はさらに増加し、約9,200億円(同+37%)となった[図表1]。2020年度の賃貸マンションの売買取引が不動産売買市場全体に占める割合も、21%(前年12%)となった。
一般的に、個々の賃貸マンションは、オフィス・商業施設等の商用不動産に比べて投資規模が小さく、従来は大規模な投資家にとっては投資対象になりにくい傾向があった。しかし、近年では数棟から数十棟の賃貸マンションのポートフォリオを組成して投資総額を大きくし、賃貸マンションをまとめ買いする取引が増加している。
国内資本については、コロナ禍以前から、オフィスやホテル等の投資適格物件の減少に応じて、賃貸マンションも前向きに投資対象としてきた。これに加えて、2020年の外国資本による賃貸マンションの取得が、5,891億円と2018年の約7.4倍となるなど、コロナ禍前後から外国資本による投資が積極的になっていることが、賃貸マンションの取引総額を大きく引き上げている[図表2]。
また、外国資本は、多額の不動産取得用予算を持っていることが多い。外国資本による賃貸マンションへの積極投資は今後もしばらく継続することが見込まれ、外国資本への転売をあてにした国内資本による建設や物件取得も増加すると見込まれる。