1. ポストコロナの働き方とは?
ワクチン接種が進むなか、コロナ禍という長いトンネルの出口が徐々に見えてきた。コロナ禍においては、ニューノーマルが盛んに議論された。しかし、トンネルを抜けた先にどのような世界が待ち受けているかは、依然不透明である。
ポストコロナの焦点の一つが、働き方や働く場所の変化である。在宅勤務が急速に普及したコロナ禍当初は、「オフィス不要論」が注目を集めたが、在宅勤務のデメリットも明らかになるにつれ、聞かれなくなった。現在は、オフィスと在宅での勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方が主流になるとの見方が多い。ただし、オフィスと在宅での勤務割合について、一定の見解は得られていない。
2. アメリカのオフィス回帰は緩慢
ワクチン接種が拡大し、ポストコロナに足を踏み入れつつあるアメリカでは、オフィス回帰の動きが進んでいるのだろうか。一部の金融機関やIT企業では、今夏からオフィス回帰を進めるとの報道も見られる。
米国では、Kastle Systemsが入退管理システムの入館記録をもとに、全米10都市のオフィス出社率を公表している[図表1]。
新型コロナウイルスの感染拡大前を基準として、全米10都市平均のオフィス出社率は2021年6月30日の週に33%と、最も落ち込んだ2020年4月15日の週の15%よりは回復したものの、依然として低水準である。
また、オフィス出社率は都市ごとに大きく異なる。10都市のなかで、最もオフィス出社率が高いのは、米国南部のテキサス州オースティン(51%)で、同州のダラス(50%)が続く。一方、最も低いのは、IT企業が集積するサンフランシスコ(19%)で、2番目に低いのは大手金融機関が集まるニューヨーク(22%)である。
このように、米国では、ワクチン接種が進むなかでもオフィス出社率の回復は緩やかなものにとどまっている。コロナ禍で拡大した在宅勤務が定着しつつあることで、オフィス出社率が構造的に低下していることを示唆しているのではないだろうか。また、回復のスピードは都市間で大きな差があり、今後の働き方とオフィス活用は都市ごとに異なる可能性がある。