最大で2000万円の補助金を受けられる事業も
この中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業はすでに終了していますが、国による同様の取組みとして、ほかには新輸出大国コンソーシアムや、現地進出支援強化事業、「JAPANブランド育成支援等事業」が行われているところです。
新輸出大国コンソーシアムは、事業計画策定から展示会出展、その後の商談成立にいたるまで、専門家がハンズオンで一貫支援するというものです。
また、現地進出支援強化事業は、海外展示会出展支援、海外有力バイヤー招へい、海外へのミッション派遣、現地情報の収集・提供等により、中小企業の現地進出を支援するものです。
そして、「JAPANブランド育成支援等事業」は、中小企業等が優れた素材や技術等を活かした製品の海外販路を開拓するための戦略の策定、また、その戦略に基づいて行う商品の開発や海外展示会への出展等に要する経費の一部を補助するものです。
令和元年度に実施されたJAPANブランド育成支援等事業は大きく①海外・全国展開型と②支援事業型に分かれています。
海外展開や全国展開、インバウンド需要の獲得に取組む際、経費の一部を補助 補助額上限500万円(複数者による共同申請の場合は上限2000万円)、補助率2/3または1/2
②支援事業型
民間支援事業者や地域の支援機関等が、海外展開や全国展開、インバウンド需要の獲得に関する支援を行う際、経費の一部を補助 補助額上限2000万円。補助率2/3
日本酒や靴下のPR…幅広い事業が補助金を受けている
ちなみに、令和元年度のJAPANブランド育成支援等事業に応募、採択され、補助金対象となった事業は110件(事業型102件、支援型8件)に達しました。採択された事業の例を参考までにいくつか示しておきます。
・EC活用で、創業300年の日本酒を世界に発信プロジェクト
・ボトリングティ及びモダン茶道具の海外展開事業
・「外国人向け和食料理教室」をニュージーランドに展開し、同国と日本を結ぶスクール&グローバルビジネス
・オンライン商談を活用したベトナムにおけるアップコン工法の普及
・ECセールスプラットフォームを通じたカクテル用品のEU向けDtoC(Directto Consumer)事業
・新たな米糠発酵食品開発で糠漬け文化を世界へ。EU向け商品開発及び販路開拓事業・
エシカル・ファッションブランド「KAPOKKNOT」のDtoCによるアメリカ展開
・オーガニックコットンを軸とした、奈良の靴下のSDGs対応型ブランドの世界展開
・自社イ草製品の販路開拓を目的とした台湾でのクラウドファンディングへの取り組み
・アニメーションとのコラボ戦略による「日本の歯みがき改革&海外進出」
このように、日本酒やオーガニックコットン、歯みがきなど多種多様で幅広い製品が採択され、補助金を得ています。JAPANブランド育成支援等事業は、令和3年度も引き続き実施されています(事業の中身や補助金の額等はこれまでのものとは若干、異なる可能性があります)。
経済産業省「コロナ禍だからこそ海外展開が重要」
ちなみに経済産業省が財務省に提出した令和3年度の概算要求の文書中では、JAPANブランド育成支援等事業の目的・概要について以下のように述べられています。
・人口減少による国内市場の縮小や、新型コロナウイルスによる事業へのダメージが継続する中、中小企業者にとって、海外展開や新事業展開により新たな需要を獲得することが極めて重要となっています。
・特に、コロナ危機での生活のあり方の変化による社会ニーズの変化や、電子商取引(EC)やオンライン商談の浸透をはじめとしたビジネス手法の変化などが急速に発生しており、こうした市場や社会の変化はさらに加速していくと想定されます。
・本事業では、海外市場等の新たな市場の獲得に向けて新商品・サービスの開発、販路拡大、ブランディング等に取り組む中小企業者や、そうした中小企業者の取組を後押しする⺠間支援事業者や商工会・商工会議所等に対して、それらの取組に係る費用について一部補助を行います。
・特に、ECやクラウドファンディングなどを活用した非対面・遠隔のビジネス様式に対応した取組や、社会変化を捉えた新事業の取組を重点的に支援します。
これを読むと国も、コロナ禍の今だからこそ、中小企業が積極的に海外に展開しなければならないとの思いに立っていることが伝わってきます。
コロナ禍で起きたことは、決して一時的な現象ではなく、グローバル化の必然性を前倒しさせ、今後はそれが普遍化していきます。より多くの中小企業がグローバル化のメリットに気がついていくことになりますが、まずはご自分が先手を打ってその先行利得を享受すべきです。
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