震災、戦争、高度成長…時代に合わせ「変遷」する団地
団地の歴史は、大正後期、関東大震災後の住宅供給を目的とした「同潤会」の設立から始まりました。
同潤会は第二次世界大戦勃発を機に解散し、入れ替わりで発足した「住宅営団」は、戦中の物資不足に瀕しながらも木造団地の開発に尽力しましたが、その記録はほとんど残されていません。終戦後、住宅営団はGHQの要請で解散となり、団地開発の空白時代が訪れます。
やがて日本は未曾有の高度成長時代に突入し、大都市圏への労働人口流入と、それに伴う住宅不足に対応するため、URの前身である「日本住宅公団」が設立されます。これ以降、戦後復興のシンボルともいえる「ニュータウン」政策が実行され、関西の「千里ニュータウン(大阪府吹田市他)」、関東の「多摩ニュータウン(東京都多摩市他)」や「港北ニュータウン(神奈川県横浜市)」といったマンモス団地が次々と誕生していったのです。
住民の親睦を図るイベントも定着
団地最大の魅力は、公園や学校、病院、商業施設といった「街」としてのインフラをくまなく網羅した壮大なランドプランといえます。
電車やバスに乗らなくても日常生活が完結できる環境は得難いもので、暮らしやすさから長く住み続ける住民も多いのですが、そこに高齢化の問題も垣間見えます。たとえ若いファミリーが入居しても、周囲が高齢者世帯ばかりでは孤立してしまうのです。
そんななか、古くからの居住者同士が協力し合い、若いファミリーやその子どもたちに向けたイベントを企画運営する動きもあります。
品川区にある「八潮パークタウン」では、毎夏、敷地内の緑地帯や遊歩道に色とりどりのキャンドルを灯すイベントが恒例行事となっています。これは団地居住者で構成されるNPO団体が運営するもので、密にならず、キャンドルの明かりを辿りながら夕涼みが楽しめると好評です。
コロナ禍で各地の花火大会や夏祭りは軒並み中止となるなか、このイベントは例年通り実施され、子どもたちはここぞとばかりに浴衣や甚平を纏い、ほのかに灯るイルミネーションを1つひとつ指さし、「ここにもあった」「あそこにも光っているよ」とはしゃいでいます。
「無印良品」「IKEA」とのコラボでイメージを刷新
住民の高齢化のみならず、時代遅れの間取りプランや建物自体の老朽化も顕著となった団地は、新たな活路を模索せざるを得ない時期に来ています。これらの建築的課題に対応するべく、URでは一部の新築団地に独自研究のスケルトンインフィル工法を採り入れ、水回りを含めた将来的な大規模リノベーションにも対応できるよう準備を進めています。
加えて、昭和から平成にかけて建築された旧態の団地に関しては、家具・インテリア雑貨販売で人気の高い「無印良品」や「IKEA」といった企業とコラボレーションしながら、若いファミリー層に対し積極的なアピールを行っています。
「無印良品」の提案例
独自の「団地アンケート」結果をもとに、小天井やキッチン台の高さに合わせて調整可能なユニットシェルフ、押し入れサイズにフィットする収納ボックスなどを利用した、すっきり暮らせる室内空間を提案。
「IKEA」の提案例
「スカンジナビアンモダン(北欧風スタイル)」「トラディショナル(伝統的スタイル)」「ポピュラーモダン(クールかつシャープなスタイル)」の3パターンのインテリアプランと、IKEAオリジナルのシステムキッチン設置やインテリアコーディネートアドバイスのオプションを提案。
無印良品やIKEAとのコラボレーションはインテリア中心の内装工事に留まりますが、この試みにより、ターゲットである若いファミリー層の関心が集まったことは事実です。また、スケルトンインフィル工法を採用した築浅団地に関しては、ダイナミックなリノベーションが実施されるのは数年先となるので、今後の経過を見続けていきたいと思います。