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親世帯と子世帯が同居する二世帯住宅は、税務・経済・生活面で様々なメリットがあります。特に、親の相続が発生した際「小規模宅地等の特例」を適用させることで得られる、相続税の圧縮効果は大きな特徴といえるでしょう。しかし二世帯住宅における相続税の注意点を知らないと、特例が適用されなかったり、親族間の相続トラブルに発展したりする可能性も。本記事では二世帯住宅における相続税の基本について見ていきましょう。

世帯住宅で相続が発生…一次相続と二次相続のポイント

二世帯住宅で両親と同居していた場合、相続が発生するのは以下の2つのケースが考えられます。

 

二世帯住宅で相続が発生する2つのケース

① 一次相続…両親2人と同居していた(父か母は健在で引き続き同居)

② 二次相続…両親のどちらかと同居していた(父も母も亡くなった)

 

一次相続と二次相続では、二世帯住宅において相続が発生した際の注意点が異なります。

一次相続では子供が二世帯住宅を取得すべき

一次相続の時点で子供が小規模宅地等の特例を適用できるのであれば、二世帯住宅は被相続人の配偶者ではなく、同居していた子供が取得すべきです。

 

たとえば、父の相続が発生して母は引き続き二世帯住宅で同居する場合、父の相続における法定相続人は「配偶者(母)」と「子供」となります。相続税には小規模宅地等の特例と同じく節税効果が高い「配偶者控除」という控除があり、配偶者であれば相続財産が1.6億円までは相続税が無税になります。

 

ただ、「配偶者控除で相続税が無税なら、配偶者が全財産を相続すれば良い」といった安易な考えで配偶者控除を適用させると、二次相続(配偶者の相続)で子供の納税額が高額になってしまうというデメリットがあります。

 

この理由は、二次相続では一次相続で配偶者が取得した財産に配偶者の財産が加算されて遺産総額が高くなり、さらに二次相続では配偶者控除が適用できず、基礎控除額や非課税枠の計算元となる法定相続人が1人減ってしまうためです。一次相続の際に二世帯住宅で子供と同居をしているならば、二次相続税対策として子供が二世帯住宅を取得すべきです。

二次相続では兄弟間の相続トラブルになる可能性も

二世帯住宅における二次相続では、兄弟間での遺産分割方法における相続トラブルに発展する可能性があるため、生前対策されることをおすすめします。

 

たとえば、母・長男・次男の家族構成で、母と長男が二世帯住宅で同居していたと仮定しましょう。この場合、母の相続における法定相続人は、「長男(同居)」と「次男(別居)」の2人となります。仮に母の遺産が5,000万円の二世帯住宅と100万円の現金だった場合、長男と次男で「母の遺産をどのように分割するのか」でトラブルになってしまうのです。もちろん兄弟間で話し合いが成立する場合や、二世帯住宅と同等の相続財産がある場合は問題ありません。

 

ただし母の相続発生時に二世帯住宅以外の相続財産がなく、長男が引き続き二世帯住宅に住む場合、「代償分割」として相応の現金を次男に支払う必要があります。仮に次男に支払う現金が無ければ、長男は取得した二世帯住宅を売却して現金を分割する「換価分割」を選択することになり、長男は住む家を失ってしまいます。このような相続トラブルに発展させないためにも、二世帯住宅における相続では、二次相続の被相続人が生前対策をしておく必要があるのです。

 

具体的には予め家族間で納得するまで話し合いをし、公正遺言証書を作成しておくなどの対策が必要と言えるでしょう。

二世帯住宅における相続税の知識まとめ

二世帯住宅で親世帯と子世帯が同居する場合、将来発生する親の相続について予め考えておくことは必要不可欠です。

 

小規模宅地等の特例の適用要件を満たさなければ、特例を適用できずに相続税を過大に納税してしまう可能性があります。

 

さらに特例の適用には相続税申告が必須となるため、申告を失念してしまうと本来は納税する必要がない延滞税や加算税などのペナルティが課せられるリスクもあります。

 

また、二世帯住宅で「同居している子供」と「別居している子供」がいる場合は、生前にしっかり家族で話し合いをしておかないと、兄弟間での遺産分割方法における相続トラブルに発展する可能性も出てくるでしょう。

 

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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