前回に引き続き、工夫次第で相続税額をゼロにできる理由を解説します。今回は、財産額3億円以下の人が相続税をゼロにするためには、どのような工夫が必要となるのかを見ていきます。

3億円までならシンプルな方法で相続税をゼロにできる

仮に配偶者がなく子供2人の家庭で3億円の財産を残して相続が発生したとすると、どのくらいの相続税がかかると思われるでしょうか?

 

答えはなんと約7千万円です。同じケースで子供1人だと約9000万円です。親が何の対策もとらないでいると、2人の子供は相続時に、それぞれ約3500万円、子供1人の場合は9000万円もの税金を黙って国に納めることになります。

 

実は、財産額3億円程度までならば、生前贈与、保険の加入、小規模宅地特例の適用などの比較的シンプルな方法だけで、相続税をほぼゼロにすることができます。

 

例えば、子供や孫のほか子供の配偶者を含めて10人の受贈者がいるとしましょう。1人につき110万円ずつ合計10人に贈与すると、年間1100万円を非課税で贈与することができます。この贈与をコツコツ20年間続けていくと、2億2000万円の財産を非課税で次世代に移転できることになります。

 

さらにこの暦年贈与に加えて、生命保険金の非課税枠「500万円×法定相続人数」の活用や、後述する「小規模宅地等の評価減の特例」を適用することによって、相続財産を基礎控除額以下とし、相続税をゼロにすることができるのです。

 

ここでのポイントは、特に財産額が3億円に近い人の場合は、できるだけ早くから贈与を始めること、そしてできるだけ贈与人数を増やすことが、相続税をゼロにする前提条件となることです。

 

7000万〜9000万円の税金を国に納めるのか、税金をゼロにして子供に残してあげるのか、相続税は合法的に「払う」「払わない」を選択することができる税金なのです。

対策の鍵は贈与による移転、評価の引き下げ、海外移住

相続税対策は、次の3つのキーワードで表すことができます。覚えておきたい対策と、各対策の控除額、非課税枠などを記載しています(2016年5月時点)。

 

キーワード①「贈与による移転」

 

●暦年贈与 控除額110万円

●夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除 控除額2000万円

●教育資金贈与 控除額1500万円

●結婚・子育て資金贈与 控除額1000万円

●生命保険金 非課税限度額500万円×法定相続人の数

●相続時精算課税制度 特別控除額2500万円

 

キーワード②「評価額の引き下げ」

 

●小規模宅地等の評価減の特例 50%〜80%減

●賃貸不動産の取得

●自社株評価の引き下げ

 

キーワード③「海外移住」

 

●国内財産は全て課税対象

●親子で海外移住して国外財産を贈与

●5年ルール

 

次回は、キーワード①「贈与による移転」について見ていきましょう。

本連載は、2016年7月4日刊行の書籍『超低金利・大増税時代の資産防衛戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

超低金利・大増税時代の 資産防衛戦略

超低金利・大増税時代の 資産防衛戦略

森 秀光

幻冬舎メディアコンサルティング

終わりの見えない超低金利時代。加えて、相続税や所得税の増税、海外資産の捕捉厳格化など、富裕層が持つ資産は国から狙い撃ちにされているのが現状だ。そんな中で大切な財産を守り受け継いでいくには、どうすればいいのか? …

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