法定耐用年数と経済的耐用年数のギャップを活用
キーワード②損益通算による利益圧縮
個人・法人とも、減価償却資産を取得し、多額の経費を短い期間で計上することで、利益を圧縮し所得税を節税することが可能となります。
減価償却資産とは、建物・機械設備・車両など長期間使用できる高額資産のことで、購入した年だけ経費の計上をするのではなく、その年に価値が下がった分を経費として計上することになっています。
土地や骨とう品は、価値が減っていくものではないため減価償却資産とはなりません。「減価償却資産投資」は、節税といっても「課税の繰り延べ」に該当します。課税の繰り延べは「一時的に所得が増えるものの将来の所得は不安」といった場合に有効です。効果を上げるポイントは、短い期間でできるだけ多額の減価償却費を計上できる資産を活用することです。
具体的には、耐用年数が短い中古資産を活用することや、定率法が使える資産を活用すること、そして政策税制による特別償却を活用することなどです。「法定耐用年数よりも経済的耐用年数が長い資産」が狙い目で、代表的なものが「航空機・ヘリコプター」と「建物割合の大きな不動産」です。
まず、航空機やヘリコプターを使った対策はオペレーティング・リースといわれ、個人や法人が所有する減価償却資産を、他者に貸し付けて賃貸料を得るという賃貸借取引のことです。
オペレーティング・リースとは、短期償却、高値売却が可能な資産への投資を指します。航空機、ヘリコプターなど、大型リース資産へ匿名組合出資する契約もありますが、最近では直接投資案件もあります。ポイントは、短期で償却でき、価値が落ちず、高値で売却ができる資産であることです。
購入した最初の年に全額損金計上できるものであれば、利益が大きく出た年に購入し、損益通算させます。これが基本的な考え方になります。
航空機やヘリコプターが優良資産といわれる理由は以下の通りです。
①定率法による償却が認められており、法定耐用年数が5〜10年と経済的耐用年数の
30〜40年よりも短く、早期に減価償却を終えることができる。
②航空機の場合、安全性確保のため、厳しい保守・整備作業により中古機体の機能が維
持され、価格の減価が緩やかである。
③中古流通市場が発達しており、売却が比較的容易であることから、投資の回収可能性が高い。
海外に多い「建物割合の大きな不動産」への投資
もう1つの代表的な対策は、「建物割合の大きな不動産」に投資することによる損益通算の方法です。例えば木造の建物は、22年の耐用年数を過ぎると簡便法で4年償却できます。中古の木造建物だと購入代金を4年で経費にできて、会計上は急速に価値がなくなっているのに、買った時とほとんど変わらない価格で売れたりすることがあるのです。
米国など海外では、建物割合が70〜90%という物件も珍しくありません。ですので、例えば賃貸用木造住宅を1億円で購入した場合、建物割合を8割とすると8000万円分を4年で償却できることになります。
つまり、4年間毎年2000万円という損失を取り込むことが可能になるので、所得税率が56%の人の場合、毎年の節税額(損失計上によって軽減できる税金)は2000万円×56%=1120万円となります。
また住宅を5年超保有して売却したとすると、長期譲渡所得の税率は20.315%となります。この取引によって、所得税の総合課税となる所得を減らして課税を繰り延べ、最終的には物件を売却して「総合所得を譲渡所得に転換」したことになります。
つまり、総合課税の最高税率56%と長期譲渡所得の税率20%の差を利用した節税となるため、単なる課税の繰り延べでない恒久的節税といえるのです。4年償却の不動産を購入する場合、日本ではあまり物件がないため、海外が中心となります。
海外不動産となると、中古市場が発達している先進国の物件が安心です。今注目されている代表例は米国で、日本では不動産取引は新築中心ですが、米国では8割以上が中古取引であり、全米の平均の空室率は7%と過去20年で最低となっています。
中でも価格低減リスクが小さい地域として西海岸エリアを有望視する不動産会社が多いほか、ハワイも根強い人気があります。