「節税」は合法的かつ「節度」が大切
パナマ文書の発覚を機に、「租税回避行為」に対しては今後監視の目が厳しくなるでしょう。課税逃れを目的としていなくても、タックスヘイブン籍法人の出資者となっている、あるいはスイスに海外口座があるというだけで、国税の監視リストに入ってしまうかもしれません。
一度目をつけられると取り返しがつかないので、「節税」は合法的であることは当然として、行きすぎないように「節度」が大切です。
節税には、恒久的な節税と、繰り延べ型の節税があります。「恒久的な節税」には経費を増やすことや税額控除の活用などがありますが、これらは会計処理の過程において漏れなく活用すべき方法です。
また法人化のように、法人税と所得税の税率の違いを活用する節税もあります。「繰り延べ型節税」とは、当期の経費を多く計上することにより税額を減らし、翌期以降に利益を繰り延べるというものです。
例えば、保険の加入、オペレーティング・リース、減価償却資産の特別償却、圧縮記帳などがあります。節税ではありませんが、相続税・法人税などの国税を納めた人が、納めすぎた税金を取り戻す「更正の請求」という手続きがあります。相続税の場合、「更正の請求」ができる期間は、申告期限(相続開始日の翌日から10カ月以内)より5年以内となっています。
資産運用ほどの不確実性がない「税金対策」
相続税の更正の請求の多くは、不動産評価の見直しによるものと見られています。これは財産評価基本通達における不動産評価の規定が複雑多岐にわたるため、相続税の申告に不慣れな税理士だと、財産評価方法を適正に適用できていない場合があるためです。
特に500㎡以上の「広大地評価」の適用漏れがあったりすると、数千万円単位の還付の可能性が出てきます。全国の税理士の人数が約7万5千人なのに対して、相続税の課税対象者数は年間約5万6千人であることから、相続税申告の経験が少ない税理士も多いものと思われます。さらに相続専門でない税理士の多くは、否認リスクが生じないように保守的な申告をする傾向があると言われています。
以上のような状況から、相続税申告を依頼するなら、相続専門の税理士を選ぶことをお勧めします。日本は、所得税(住民税・復興税含む)の最高税率が56%、相続税・贈与税の最高税率が55%と、フロー・ストックともに富裕層に対する税率が世界最高水準の国です。
しかし、否認リスクを伴う危うい節税策をとらなくとも、王道となる対策を戦略的に実行すれば、税金を十分コントロールできることがご理解いただけたものと思います。ただし、王道となる対策は長期にわたることが多いため、途中で税制が改正されるリスクが伴うことは認識しておく必要があります。
「資産運用」が不確実性に対処する要素が大きいのに対して、「税金対策」は資産運用ほどの不確実性はなく、比較的答えがはっきりしているため、取り組み方次第で確実に成果が期待できる領域といえます。