欧州グリーンボンド市場の動向 (※画像はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの影響を受けた欧州経済の支援策の役割を担う、欧州連合(EU)の復興基金は、その財源をEU名義の債券の発行で調達する。EUによると、総発行額の3割程度にあたる約2,500億ユーロをグリーンボンドで発行することを示唆していた。今回発表された10月の起債を足がかりに、EUが欧州のグリーンボンドをけん引する姿も想定される。

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グリーンボンド:10月にEUが初のグリーンボンドを起債、市場の拡大が期待される

欧州連合(EU)の執行機関の欧州委員会は2021年9月7日にグリーンボンド(環境債)の初回の発行を10月に行うと発表した。新型コロナウイルスの影響を受けた経済の復興支援に必要な資金を調達する復興債発行計画の一環となる。

 

EUは約8,000億ユーロ(約104兆4,000億円)規模の復興支援を計画しており、うち約3割強をグリーンプロジェクトが占める模様だ。グリーンボンドの発行で得た資金がこの財源として活用される見込みだ。

欧州の復興基金を基点に、グリーンボンド市場は更なる拡大か

新型コロナの影響を受けた欧州経済の支援策の役割を担うEUの復興基金は、その財源をEU名義の債券の発行で調達する。EUによると、総発行額の3割程度にあたる約2,500億ユーロをグリーンボンドで発行することを示唆していた。今回発表された10月の起債を足がかりに、EUが欧州のグリーンボンドをけん引する姿も想定される。

 

まず、グリーンボンド市場を簡単に振り返る。

 

ESG(環境・社会・企業統治)という言葉を聞かない日は無いほどESGは定着したが、株式に比べESG債券はややなじみが薄いようだ。それでもESG債は広がりを見せている。適格環境事業に資金の使い道が限定されるグリーンボンドをはじめ、資金使途が社会事業とされるソーシャルボンド、環境・社会の両事業を資金の使途とするサステナビリティ・ボンド等がある。

 

今回はグリーンボンドに焦点を当て、その規模を発行額で見ると着実に市場の拡大の様子が伺える(図表参照)。

 

年次、期間:2016年~2021年9月迄、グレー部分はCBI予想 ※Climate Bonds Initiative(CBI)のデータに基づく実績(緑)とCBI予想(グレー)を使用、21年はCBI予想と直近までの実績の差をグレーで表示 出所:CBIのデータを用いてピクテ投信投資顧問作成
[図表1]世界のグリーンボンド発行額(及び予想額)の推移 年次、期間:2016年~2021年9月迄、グレー部分はCBI予想
※Climate Bonds Initiative(CBI)のデータに基づく実績(緑)とCBI予想(グレー)を使用、
 21年はCBI予想と直近までの実績の差をグレーで表示
出所:CBIのデータを用いてピクテ投信投資顧問作成

 

なお、図表は英国のClimate Bonds Initiative(CBI)が公表している世界のグリーンボンドの発行実績を掲載した。グリーンボンドとして計上したのは、CBI認証取得もしくはCBIのグリーンボンドの定義に準拠したもののみとなっている。例えば、今年はこれまで約2,670億ドルが発行されているが、CBI認証が約230億ドル、準拠した分は約2,440億ドルだ。グリーンボンドとラベル付けされていてもCBIの定義に合致しない約200億ドル弱の債券についてはCBIもグリーンボンドとしては認定していないため、図表でもカウントされていない。何をもってグリーンボンドと呼ぶのかという課題は残されている。

 

今回、EUが復興基金の資金調達のためのグリーンボンドの発行に関する枠組みは、欧州を中心に金融機関が加盟する業界団体である国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則に沿った内容と見られる。したがって、独立した外部機関による評価を受けるなど透明性を高めている。欧州委員会は資金の使用使途(グリーンプロジェクトに使われているかなど)の外部評価と、定期的な報告をする予定だ。

 

なお、EUは今回のEUによるグリーンボンドの発行に関する枠組みとは別に、「欧州グリーンボンド」(EUGB)の基準を設定する規則案を発表している。今後、欧州理事会や議会による検討プロセスを経る必要はあるが、この規則の対象は国などの公的機関だけでなく、社債など民間にも対象となる可能性がある。環境問題で先行する欧州であってもグリーンの定義などには課題は残るが、今後の展開で整備が進むことが期待される。

 

なお、EU域内ではこれまでに10ヵ国以上がグリーンボンドを発行したと見られるが、今月にはスペインなども発行が予定されるなど広がりを見せている。ただ、発行額が増加する欧州であっても、債券市場全体に比べればグリーンボンドの市場規模は数パーセントと見られる。それでも、今後の市場動向の展開は期待をもって見守りたい。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『欧州グリーンボンド市場の動向』を参照)。

 

(2021年9月9日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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