(写真はイメージです/PIXTA)

後悔しない有料老人ホーム選びを実現するためには、施設見学時に専用居室をきちんとチェックすることが大切です。本記事では、『介護の三ツ星コンシェルジュ――暮らしを豊かにするコラムサイト』を運営する株式会社ベイシスの取締役シニア事業部長である荒牧誠也氏が、南向きの専用居室を避けた方が良い理由を解説します。

有料老人ホームの共用施設で注意するポイント

皆さんが「有料老人ホーム」を思い浮かべる時に、建物であれば何を思い浮かべますか? 高い利用料を取られるのだから、豪華なエントランスロビーに広々としたレストラン。カラオケルームにリハビリルーム、大きな浴室に広い庭……。そんな立派な共用施設を想像されるのではないでしょうか。

 

主に自立の方が入居対象とされるホームはそうかもしれませんが、要介護の方を対象としたホームは少し異なります。基本的な諸室としては、ロビー、フロント、事務室、食堂、浴室(機械浴室、介護浴室)、トイレ、機能訓練室、健康管理室、相談室、多目的スペース(レクリエーションに使うスペース)、談話室。

 

ホームによって特長として備えている共用施設として、カラオケルーム、庭園、散歩道、シアター、図書室、温水プール、プレイルームなどがあります。こういった共用施設はホームの目玉になりますので、ホームページやパンフレットに大きく取り上げられています。

 

ところで、レンタブル比という言葉をご存じでしょうか? レンタブル比とは、延べ床面積に占める収益部分(ホームでいうと専用居室部)の面積比率のことで、賃貸部分の面積÷延べ床面積で計算されます。

 

老人ホームでいうと、専用居室部が収益部分の面積、その収益部分の面積に共用施設、廊下、EV、エントランス部などを足し合わせた面積が延べ床面積となります。

 

一般的に収益部分の面積が大きいほど収益性は高くなります。老人ホームの場合、低価格帯(月額利用料[家賃、管理費、食費]合計で20万円未満)のホームでレンタブル比は50~60%、中価格型でのホーム(月額利用料で20万円代)で45%~50%、高価格帯(月額利用料で30万円以上)で40~45%が一般的です。

 

レンタブル比が低くなればなるほど、家賃は高くなりますが、その分、共用施設が充実し広々としたホームになります。

 

■共用施設で注意するポイント

 

一般的に規模の大きいホームのほうが共用施設の種類が多く、サークル活動やレクリエーションが盛んに行われる傾向にあります。経営の都合で、月額利用料が高く設定されている大手企業が運営しているホームは、60~100室、逆に月額利用料が低く設定されている中小企業が運営するホームは30~50室程度になっています。

 

ただし、入居される方の性格(人との関わりが苦手、大勢の入居者と活気あふれる生活を送りたいなど)を無視して共用設備などのほかの内容で決めてしまうと、あとあと後悔の原因にもなります。実際に、見学や体験入居を行って施設の雰囲気を確認することをおすすめします。

 

私のホーム運営の経験上、要介護の方が対象の有料老人ホームの共用施設で注意するポイントを説明していきましょう。

 

1つ目のポイントは浴室が十分配置されているか。居室に浴室のないホームは、ホーム全体に設置されている浴室の数が重要です。入浴は入居者の清潔を保つためにも重要なサービスです。週に3回入浴できるか計算してみましょう。

 

豊中市のホームの例で見ると、同ホームの浴室は介護浴槽も含め5カ所。入浴サービスに充てる時間帯として、9~12時と14~17時の計6時間なので、1人あたりの入浴サービスにかける時間を60分と仮定すると、このホームは1日に浴室1カ所あたり6人の入浴が可能となります。

 

ホーム全体で浴室数は5カ所ですので6人×5カ所、30人/日の入浴が可能な浴室を備えています。ホームの居室数が31室ですので、ほぼ毎日入浴ができる浴室数を備えていることになります。

 

2つ目のポイントとして、介護浴室を備えているかも重要です。要介護度が進んで寝たきりになった場合に、この設備がないと入浴が難しくなり、清拭対応となります。寝たきりになった場合でも入浴が可能かどうか、介護浴室の有無は重要なポイントです。

 

3つ目のポイントは、各フロアに食堂があるか否か。皆さんは「ユニットケア」という言葉をご存じでしょうか? ユニットケアとは、配属された職員が入居者の介護、看護などに迅速に対応できるよう、規模を縮小した介護、看護の提供体制のことをいいます。

 

小規模ケアが実現されると、個別ケアを可能にする、入居者と職員がなじみの関係になり距離が縮まる、入居者の状況をより細かく把握できる、入居者の要望を叶えやすくするなどのメリットがあるといわれています。

 

ただし、ホーム運営は「経営」の観点も重要ですので、認知症対応型のグループホームのように小規模の運営には限界があります。せめて、フロアごとのケアを行えるように、食堂が各フロアにあるかどうかはチェックすべきポイントになります。

 

4つ目のポイントは、入居者本人が楽しめる共用施設を備えているか否か。要介護の方がホームで生活する場合、レクリエーションが充実してないと、長い時間専用居室にいることになります。食事以外に1日に1回でも共用施設に行くことは重要です。

 

入居者にリハビリ意欲が強い場合はリハビリ設備が充実しているか、カラオケが好きな方向けにカラオケ設備があるか、庭いじりが好きな方には庭園があるか。重要事項説明書には設置されている「共用施設」にすべて明記されています。重要事項説明書を見ながら、疑問に思ったことは職員さんに聞いてみる必要があります。

 

■共用施設を活かせるソフトが充実しているか

 

施設を見ていくうえで、「安全性」は重要なポイントです。高齢者向けの居住施設ですので、大半の施設がバリアフリー対応といった高齢者に配慮された施設になっていますが、一部、危険防止の配慮が足りないと思われる部分もあります。

 

車椅子になった場合などのことを想像してみて、安全性をチェックしましょう。有料老人ホームは、高齢者に「居住スペース」を提供するサービスですので、その「居住性」も重要です。

 

居住性が悪ければ、居心地が悪くなります。照明や音楽といったハード面に加えて、すでに入居されている方やスタッフの雰囲気などを見学時や体験入居時にチェックしましょう。そして、清潔感も大切です。

 

どんなに共用施設が立派でも、ホームに清潔感が欠けていれば居住性は悪くなります。玄関まわりだけでなく、共用トイレがピカピカに清掃されているか、場合により、スタッフスペースや厨房なども見学させてもらい、バックヤードも清潔に保たれているかも見てみましょう。

 

 

荒牧誠也氏

株式会社ベイシス

取締役シニア事業部長

 

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荒牧 誠也

幻冬舎メディアコンサルティング

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