【医療経営】病院で多種専門職のマネジメントが必要な「ワケ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

英国国立ウェールズ大学経営大学院にて「医療経営学修士号」を取得した臨床医である角田圭雄氏の著書『MBA的医療経営』より一部を抜粋・再編集し、医療経営についての見解を紹介します。

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非営利組織性だけじゃない、医療経営学が難しい理由

病院経営に関してよく聞く諦めの声(特に事務職から)としては、「私たちどうせ変わりませんから…」「高度専門職の集団ですから…」「ともかく企業と違って特別ですから…」「偏差値が高くプライドの高い医師がトップなので…」などが挙げられます。

 

非営利組織であること以外にも、医療経営が難しい理由として以下の3つの理由が考えられます。

「ヒューマンサービス組織であること」…合理性の困難

サービス組織とは、その活動による無形の成果、つまりサービスを外部の受け手に向けて提供する組織のことです。金融、不動産、交通・通信、さらにホテルや観光などのサービス業を成り立たせているものが、サービス組織です。なかでも医療や保健、福祉、教育など、人が人に対して、いわば対人的に提供する組織を一括してヒューマンサービス組織と呼びます。

 

工場で製品を作って売ることと違い、病院は人が人に対して、いわば対人的にサービスを提供する組織であり、品質の評価や管理が困難で、工業製品と異なり、どこまで品質を高めればいいのかも分かりません 。

 

サービスを受ける人の人格やプライベートにまで関わらざるを得ません。サービスの受け手の福利厚生を左右することもあります。ヒューマンサービス組織はわれわれの幸福の構築に直接関わっています。したがって企業のような合理的経営システムを組み立てることが難しくなります。

「多種の専門職のマネジメントが必要」…機能的な連携

企業の場合はピラミッド型に、価値観、規範、慣習を上層部から現場まで統一することが可能です(図1-左)。

 

一方、病院は医師、看護師、薬剤師、理学療法士、検査技師など多種の専門職の集合体です。各専門職は独自に在籍する専門職の集団(学会、医師会、看護協会など)の価値観、規範、慣習を持っており、それらの集合体で一つの病院組織を形成することになります(図1-右)。

 

図1:医療専門職の管理の困難性
図1:医療専門職の管理の困難性

 

したがって、各専門職は病院に帰属しているという意識よりも、各専門職の集団に属しているという意識が高いと言えます(これを準拠集団といいます)。特に、従来医師の人事は大学医局によって決まることが多く、勤務病院に対する医師の帰属意識は他の職種と比べると低い点は否めません。

 

このような多職種の異なった価値観、規範、慣習を統合しなければなりません。病院とは、非常に多くの職種が複合的に合わさってできた組織であり、これらの関係に機能的な連携が成り立つことが、組織の成果の是非や可否を決定する最大の要因です。

 

多種の専門職の存在は目標の多様性を生み、マネジメントの困難性に繋がります。すなわち、組織の目標と専門職の目標の不一致を起こしたり、部門間のコンフリクト(対立)が生じやすいのです。

「2つの競争が存在する」…制度適合と市場適合

医療においては、医療政策や診療報酬改定にいかに適応するかといった制度適合競争と、地域や、患者のニーズにいかにこたえるかといった市場適合競争との2つの競争が存在し、一般企業経営よりも、制度適合競争の影響が強いことが経営の困難性の背景にあります。

 

制度適合競争では、年々変化する制度や仕組みに対応するため長期のビジョンを持てなくなり、短期的視点に陥ります。

 

医療経営のセミナーというと診療報酬や包括支払制度(DPC/PDPS)など制度適合競争に打ち勝つための戦術をテーマとしたものが多く見られます。

愛知医科大学 内科学講座肝胆膵内科学准教授

愛知医科大学内科学講座肝胆膵内科学准教授(特任)。一般社団法人日本医療戦略研究センター(J-SMARC)代表理事。医師、博士(医学)、MBA(医療経営学修士)。

1970年大阪府生まれ。1995年京都府立医科大学卒業、2002年京都府立医科大学大学院で博士号(医学)を取得。市立奈良病院消化器科部長、京都府庁知事局知事直轄組織給与厚生課健康管理医(総括)、京都府立医科大大学院医学研究科消化器内科学講師を経て2016年10月から現職。2015年英国国立ウェールズ大学経営大学院でMBA in Healthcare Management(医療経営学修士号)を取得。立命館大学医療経営研究センター客員研究員を兼任。日本肝臓学会評議員・指導医。日本消化器病学会評議員・指導医。日本医療経営実践協会医療経営士3級。

著書に『最新・C型肝炎経口薬治療マニュアル』(2016年4月、編集および共著)『症例に学ぶNASH/NAFLDの診断と治療|臨床で役立つ症例32』(2012年4月、編集および共著)、『最新!C型肝炎治療薬の使いかた』(2012年10月、編集および共著)、『見て読んでわかるNASH/NAFLD診療かかりつけ医と内科医のために』(2014年8月、編集および共著)

著者紹介

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※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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