(※写真はイメージです/PIXTA)

小児科医である岩山秀之氏の著書『希望の薬「スピンラザ」』より一部を抜粋・再編集し、難病指定されている脊髄性筋萎縮症について、肺炎をきっかけに罹患が発覚した電動車いすの患者「かけるくん」の症例を紹介します。岩山医師との対話をきっかけに、「遺伝子検査による診断」という選択肢を知ったかけるくんとおばあさんでしたが…。

「自分のことを知りたい」遺伝子検査を受ける決心

かけるくんとおばあさんは遺伝子検査を受ける気になっていました。しかし問題は、お母さんにどのように遺伝子検査の話をするのかということでした。お母さんに説明せず遺伝子検査を行うわけにはいきません。

 

お母さんは、かけるくんの今までの経過や病気のことを聞かれると、昔のことを思い出してパニック発作が出る、とカルテに記載されていました。私が担当するまでにも、小児科外来や救急外来でたびたびトラブルになっていました。

 

そのようなお母さんに、遺伝子検査をやりますとお話しするのはとてもリスクがあります。場合によっては病院にクレームが入り、教授に怒られて始末書を書かないといけないかもしれません。

 

お母さんに直接話すよりは、まずはお母さんの意向を聞いたほうが無難だろうと考えました。

 

そこで、遺伝子検査の話を聞きたいかおばあさんからお母さんに聞いてみてもらったところ、とりあえず話は聞いてみたいとのことでした。

 

かけるくん、お母さん、おばあさんが揃った状況で、遺伝子検査をすれば臨床試験が受けられるかもしれないという話をしました。お母さんは、

 

「今まで治療があるなんて聞いたことないんですけど、そんなことってあるんですか?」

 

と半信半疑でした。

 

もちろん、私も絶対に臨床試験が受けられると思っているわけではないので、何とも言いようがありません。私がそれ以上お母さんに説明することができず困っていたところ、かけるくんが、

 

「自分のことを知りたいから検査を受けたい」

 

と言い出しました。

 

確かに法律的には16歳以上だと自己決定権があり、必ずしも親の同意はなくても遺伝子検査はできます。

 

このころ、かけるくんは県立高校に通っていて、クラスで3位を取るなど成績は優秀でした。また、かけるくんは、私の話を聞いた後に遺伝子検査を受けるメリットや臨床試験の可能性についてすでに調べて、遺伝子検査を受ける決心をしていたのです。

次ページ遺伝子検査で下された、脊髄性筋萎縮症という診断

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『希望の薬「スピンラザ」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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