信託開始から30年経過後、そのとき生存する次順位の受益者の死亡時まで信託は存続します。また、遺留分減殺請求は第二受益者が受益権を取得した段階で問題となるため注意が必要です。ここでは信託法の効果について、具体例を用いてご紹介します。

「期間の制限」とは何か

信託法は、信託が設定されたときから30年を経過したとき以降に現存した受益者が受益権を取得した場合、その受益権が死亡すると受益権は消滅すると定めています。

 

例えば、Aが自らの生存中はAを第一受益者、Bを第二受益者、Cを第三受益者、Dを第四受益者とする信託を設定する場合、①設定時から10年後にAが、20年後にBが死亡しCが生存しているときは、Dの死亡時まで消滅しません。
これに対し、②設定時から10年後にAが、31年後にBが死亡しCとDが生存しているときは、Cの死亡時で信託が消滅し、Dは受益権を取得することはできません。

遺留分減殺請求の問題は?

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託においても、遺留分減殺請求の対象となる場合があります。例えば、委託者兼受益者Aが死亡し、その者に第二受益者B以外の相続人がいた場合、第二受益者Bの受益権取得が他の相続人の遺留分を侵害した場合には、遺留分減殺請求の対象となります。

 

これに対して、第二受益者Bおよび第三受益者Cが死亡した場合には、これらの受益権取得は遺留分減殺請求の対象にはならないと解されています(法制審議会信託法部会第29回議事録)。

 

したがって、先祖代々の資産を残そうとする場合、AがBに対して受益権を与えるときはAの法定相続人との間で遺留分の問題が生じますが、Bが死亡して受益権がCに移転するときはBの法定相続人との間で遺留分の問題が生じないということから、この制度を使うメリットは大きいといえます。

本連載は、2013年12月2日刊行の書籍『資産運用と相続対策を両立する不動産信託入門』から抜粋したものです。その後の税制改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

資産運用と相続対策を両立する 不動産信託入門

資産運用と相続対策を両立する 不動産信託入門

編著 千賀 修一

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢の不動産オーナーなどは、老後の不動産管理や賃貸経営、そして相続に関して、さまざまな不安要素が生じてくるものです。不動産管理に関する知識がなかったり、あるいは財産を目当てとした思わぬトラブルなどが発生したりし…

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