TVや新聞ではコロナ禍で経営難に陥っている企業や経営者が取り上げられがちですが、実は、売上が増加している企業も少なくありません。コロナ禍でも好調に成長する企業とは、一体どんな企業でしょうか。中小企業の経営支援を幅広く行う筆者が、30%も増収したという地場中小工務店の事例を基に、中小企業の「DX化」について解説します。
「顧客のニーズ」を注視することがDXの第一歩
さて、今回ご紹介したあいホームの取組事例は、特段、高額&大規模なシステム開発を伴ったDXではありません。PDF資料を用意し、スマホ閲覧に対応させた、という小さな取り組みです。
ただし、DXの旗振りをしている経済産業省が2018年12月に発表したDXの定義:「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること。」に照らし合わせれば、紙パンフレット資料の郵送が当たり前の業界慣習を打ち破り、来店後の接客営業で勝負をかけていたビジネスモデルを変革し、来店前に購入確度を高めるという手法は、立派なDXと言えます。
流行やトレンドに関心を払うことも大切ですが、今回取り上げた宮城県の地場中小工務店の取組みは、DXやコロナというキーワードに振り回されず、まずは目の前の顧客に最大限の注意を払い、自ら変革を行う姿勢こそ大切なのだと気付かされる事例ではないでしょうか?
また一方で、「営業は、やっぱりお客に会うのが仕事だ」「コロナで顧客に会えないから売上が上がらない」という方々に対しては、直接会ってコミュニケーションすることだけが営業の仕事や売上を上げる手段でもなく、営業の仕事とは?という本質的な問いかけをもたらしてくれる事例ともいえます。
冒頭で少し触れた大田区久が原にある老舗とんかつ店も、2代目店主が驚くほどに常連客や新規客などの客層推移を把握し、効果を補足しながら、巣ごもり需要などに合わせたテイクアウト商品のSNS発信、WEB等のデジタル活用を先手先手で実施して効果を上げていますが、大規模なシステム投資は行っていません。
DX化はあくまで手段であり、顧客や社会ニーズに合わせた変革を目的としてぶらさないことが成功のカギと言えそうです。
森 琢也
MASTコンサルティング株式会社 コンサルタント、中小企業診断士
プロフェッショナルコーチ
MASTコンサルティング株式会社 コンサルタント
中小企業診断士
プロフェッショナルコーチ
大学卒業後、(株)デンソーに入社し、約10年間経営企画や事業企画に従事。25歳で中小企業診断士試験に合格し、大手資格予備校にて中小企業診断士講座の難関2科目(財務会計・経済学)を長らく担当。現在はコンサルタント・プロフェッショナルコーチとして活動中。
上場企業から中小企業まで、会社規模を問わず、働く人の気づきや成長を引き出しながら経営支援を行っている。
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連載打倒大手! 中小企業の「経営戦略術」を実例解説
認定経営革新等支援機関
中小企業診断士を中心に税理士、弁護士、社会保険労務士など、100名以上の国家資格保持者が所属するコンサルティングのプロフェッショナル集団。
所属メンバーは、財務・税務・人事・法務・マーケティング、また製造業・卸売業・建設業・サービス業・ITなど、職種や業界ごとの得意分野を持ち合わせる。
中小企業の経営に必要な知識と経験を活かし、冷静な判断、熱き心を持って、中小企業経営者をワンストップでサポート。
MASTコンサルティング株式会社:https://www.mast-c.com/
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