(※写真はイメージです/PIXTA)

TVや新聞ではコロナ禍で経営難に陥っている企業や経営者が取り上げられがちですが、実は、売上が増加している企業も少なくありません。コロナ禍でも好調に成長する企業とは、一体どんな企業でしょうか。中小企業の経営支援を幅広く行う筆者が、30%も増収したという地場中小工務店の事例を基に、中小企業の「DX化」について解説します。

HPや資料を「スマホ対応」した結果、売上が30%増加

株式会社あいホーム(以下、あいホーム)は、宮城・仙台を中心に大手戸建て住宅メーカーと競合しながら事業を営む、従業員100名以下の地場中小企業です。2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降、宮城県でも外出自粛が徹底され人の移動が減り、戸建て住宅を購入したいとあいホームを訪れる新規来店客数も約30%減少しました。

 

しかし、驚くべきは、来店客数が減り、コロナ禍で経済不安も高まっている中でも、あいホームが売上を30%伸ばしている点です。そのからくりはもちろん、客単価のUPではありません。なぜ従来のように対面営業で丁寧なコミュニケーションがとりづらくなった中で、売上を30%も上げることができたのでしょうか?

 

戸建てメーカーや工務店では、通常ネット上で資料請求の問い合わせを受けた後に、数日後に紙のパンフレットや資料を郵送しているケースが一般的です。中にはすぐにPDF資料をメールで返送する企業もありますが、大手を除いてはまだ稀と言っていいでしょう。

 

「お客様にとって、問い合わせを行った瞬間こそ、一番興味が高まっている瞬間じゃないのか?」そんな気づきから、あいホームもネット問い合わせを受けてすぐにPDF資料を返送する仕組みを作りました。

 

そして、さらに新たな改善点を見いだし、大きな成果を生み出しました。その改善を生み出した着眼点は、顧客の利用端末です。昨今、女性を中心にPCからスマホによる情報検索が加速しています(総務省『令和2年通信利用動向調査の結果』、図表2)。そうした事実から、PDF資料においてもスマホでの閲覧を想定し、資料デザインをPC用からスマホ画面サイズ用へと変更して、「今知りたい」というニーズを逃さず、適時・適切なアプローチで顧客に情報を届けることを心掛けました(図表3、4)。

 

出所:総務省『令和2年通信利用動向調査の結果』
[図表2]年齢階層別インターネット利用機器の状況(個人)出所:総務省『令和2年通信利用動向調査の結果』

 

出所:株式会社あいホーム(https://aihome.biz/)

[図表3]スマホ端末の画面サイズに適正化したPDFカタログ資料 出所:株式会社あいホーム(https://aihome.biz/)

 

HPもスマホ最適を目指して割り切って作成。PCで閲覧すると改行ズレも…。しかし、サイト訪問者の80%以上がスマホ端末。 出所:株式会社あいホーム(https://aihome.biz/)
[図表4]HPもスマホ閲覧に最適化 HPもスマホ最適を目指して割り切って作成。PCで閲覧すると改行ズレも…。しかし、サイト訪問者の80%以上がスマホ端末。
出所:株式会社あいホーム(https://aihome.biz/)

 

その結果、コロナ影響により来店客数は30%も減少したものの、多く見込み客に購入検討に必要な情報を提供し、新規来店客の多くが「この物件を買います!」と購入意思を固めて来店するようになったため、成約率が格段に上がり、コロナ禍の困難を跳ね返し、売上が30%増を達成しました。

 

もちろん、この取り組み以外にも積極的に自社情報をWEB発信し、見込み顧客との関係構築に注力したり、電子契約やZoom等を早期に採用したり、実直な取り組みがこの成果を下支えしています。なお、あいホームの進化や工夫は現在も進んでおり、スマホVR対応のバーチャル展示場をノーコードで開発しています。

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