(※写真はイメージです/PIXTA)

長引くコロナ禍、多くの人が行動を制限され、経済も打撃を受けています。しかし、具体的な数字を追ってみると、企業の倒産数は意外なほど少なく、肌感覚と数字の乖離に疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。実は、倒産件数が少ない背景には、政府による手厚い資金繰り支援等があるのですが、銀行独自の判断によるサポートも存在しているようです。しかし、なぜ銀行は倒産ギリギリの企業を見限らないのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

ゾンビでも大手なら生かしておきたいが、零細企業は…

もっとも、銀行側の事情としては、大企業はゾンビでも生かしておきたいが、零細企業は生かしておくと管理が面倒なので潰してしまう、といった選別が行われる場合もあるでしょう。

 

100億円貸したなら手間をかけても減価償却分を回収したいけれども、100万円しか貸していない企業から90万円回収するために10年間にわたって面倒な管理を続けるのはコストに見合わない、といったことがあり得るからです。

 

銀行の事情としては、赤字企業、とくに債務超過の企業への貸し出しがあると、その企業をずっと見ていなくてはならないので、手間がかかるのです。実際の銀行実務は面倒なのですが、「借り手が夜逃げしないように見張っている必要がある」といったイメージで考えていただければいいでしょう。

 

大企業優遇だ、という批判をしたくなる気持ちはわかりますが、結構大変な手間をかけて90万円しか回収できないのであれば、10年間もコストをかけ続けるインセンティブが無いので、仕方ないのですね。

不況期のゾンビ企業の「厳然たる存在意義」とは?

銀行の事情でゾンビ企業が延命しているとして、それは日本経済にとって望ましいことなのでしょうか。新陳代謝を阻害するとしてゾンビ企業の淘汰を主張している人もいますが、筆者はそうは思いません。

 

「ゾンビ企業が労働者を囲い込んでいるから成長企業に労働者が流れない」ということは、不況期には考えられません。失業者が大勢いるので、成長企業が労働者を採用したければ失業者を採用すればいいからです。

 

問題は、景気が回復して労働力不足になってきたときです。そんなときにゾンビ企業が生きていて労働者を囲い込んでいたら、たしかに成長企業が成長できなくて日本経済は困るでしょう。

 

もっとも、そうなれば政府が様々なゾンビ企業延命策を終了するでしょうから、ゾンビ企業の多くは倒産し、労働者が成長企業に流れるようになるでしょう。

 

銀行の事情としても、自己資本比率規制の制約があるので、ゾンビ企業への貸出は続けられないかもしれません。銀行は自己資本の12.5倍までしか融資をしてはならない、という規則があるので、景気が回復して成長企業からの借入申し込みが殺到すれば、そちらに貸すためにはゾンビ企業から回収せざるを得なくなるかもしれないからです。

 

資金面だけではありません。景気が回復すれば、労働力不足となり、賃金を上げないと労働者がライバルに引き抜かれてしまう、といったことも起きるでしょう。そうなれば、高い賃金の払えないゾンビ起業から高い賃金の払える成長企業に労働者が移動するようになるでしょうから、ゾンビ起業が日本経済の成長の妨げになることはない、というわけですね。

 

今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

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