インプラントは「決して高くない」と理解してもらう
保険診療よりも明らかに高そうな自費診療を勧められた時、患者さんは、その時点で断る理由をたくさん探します。それがさらに高額なインプラントとなると、患者さんの警戒心は一層高くなります。
筆者が患者さんに1本40万円のインプラントの説明する時には、こんな話をします。
「仮に、1日ひと箱煙草を吸う人がいるとします。1日に400円、ひと月で1万2000円、1年だと約15万円かかるわけです。そしてインプラントは5年保証なので、1年に15万円かかる煙草代は5年すると75万円になります。インプラント1本、うちでは40万なんですよ。どちらが幸せですか?」
こんな感じです。
患者さんに分かりやすい比較表も作ってます。1日ひと箱煙草を吸っていると5年でいくらだとか、1日1本缶コーヒーを飲むと、5年でいくらですといったようなものです。
「でも、手術怖いんでしょう」と言われた時には、「手術はこういうやり方をして、こういうふうにするので心配ないですよ」と、できるだけ分かりやすく説明をし、不安要素を取り除いてもらいます。分からないことがなくなるくらい、しっかり時間を取って丁寧に僕自身が説明をします。
患者さんの将来にとって幸せな選択をしていただくことが僕たちの喜びです。それには、患者さんの不安を1つ1つ消していくことが大切です。警戒心が解けた時、初めて「じゃあ、やろうかな」っていう気持ちになるんです。
歯科医院でも「アップセル」「クロスセル」はあり!?
「アップセル(より上位の高価商品を勧めること)」や「クロスセル(関連商品の購入を促すこと)」というの、僕の歯科医院はやってないんですけど、やってる先生もいますね。
例えば、「クロスセル」だとホワイトニングセットでいくら値引きだとか、インプラント2本目以降は2万円引きですとか・・・これは「ダウンセル」になるかもしれませんが。
「アップセル」っていうのは、「プラス3000円で○○できますけど、どうですか?」みたいな方法です。
これは僕も経験があります。家電量販店でパソコンが3万9800円という広告を見てお店に行ったら、結局20万円ぐらいのパソコンを買って帰ってきたんです。店員さんに「安価なパソコンもあるのですが、実はお勧めしたいのは、高スペックのこの商品で・・・」と説明されて、「うーん、そっちの方がいいよね」って気持ちになったんです。
そういうエサを撒くのはアリかなと正直なところ思いますが、インプラントに関しては「安くて不安要素の大きいインプラントは、僕は家族には絶対使わないな」と思ったので導入していません。それもそのまま患者さんには説明しています。
補綴に関しては、それを説明した紙を作って、悩まれる患者さんにその紙を持って帰ってもらうということにしています。松竹梅じゃないですけど、選んでくださいっていう感じで。選ぶにも何か情報がないと選びにくいですし、口頭の説明だけでは忘れてしまいますからね。