2021年度調査の主なポイント
■業界全体の顧客満足度は前年から低下または横ばいに止まる
クレジットカード4部門合計の総合満足度スコアは前年から-3ポイント低下した。ファクター別でも「クレジット機能」「ポイントプログラム」「会員向けサービス/特典」「年会費」「コールセンター」「ウェブサイト/モバイルアプリ」「手続き・サポート」のすべてのファクターで低下または横ばいとなった。
なかでも「年会費」と「コールセンター」は-10ポイント以上低下しており、総合満足度低下の一因となっている。「コールセンター」に関する質問に回答したのは、直近1年以内にコールセンターの担当者とのやりとりがあった全体の約1割であるのに対し、「年会費」に関する質問に回答したのは年会費無料のクレジットカード主利用者を除く全回答者(全体の約4割)であるため、総合満足度の低下には「年会費」ファクターがより大きく影響している。
■高額利用者の顧客満足度とロイヤルティが低下、特に年会費の満足度が大きく低下
年会費ありのカードの顧客*1で見ると、総合満足度は前年比-7ポイントで、ファクター別でもすべてのファクターで低下している。
*1<年会費2万円以上><年会費1万円以上2万円未満><年会費1万円未満>の3部門合計
特に「年会費」ファクターは-10ポイントと最も大きな低下となった。年会費の満足度は支払い月額が多い顧客のほうが低下幅が大きく、支払い月額10万円以上の顧客では-26ポイントと大きく低下している。更に継続利用意向も低下する結果となっている(図表1)。
■年会費の満足度低下の背景に、旅行など非日常場面での利用率の低下
年会費ありのカードで支払い月額10万円以上の顧客において、前年からの“2~3ヵ月に1回以上”の利用頻度の割合が大きく低下しているのは、「航空券/新幹線/特急券」「ホテル/旅館」「レジャー施設」であった。
2020年、コロナ禍において、スーパーやコンビニなど日常生活でのクレジットカードの“月に1回以上”の利用が増え、今年もほぼ横ばいだった。日常生活でのクレジットカードの利用頻度が増えた一方、旅行やレジャー施設といった非日常場面での利用頻度が低下したことが、年会費の満足度の低下の一因と考えられる(図表2)。
■クレジットカード会社から頻繁に情報収集している顧客の年会費の満足度が大きく低下
年会費ありのカードで支払い月額10万円以上の顧客において、クレジットカード会社から情報収集をしている頻度別に総合満足度、年会費の満足度の前年からの変化を見ると、“週に1回以上”見ている積極的な顧客において、年会費の満足度が大きく低下していることがわかった(図表3)。
■タッチ/コンタクトレス決済を年会費2万円以上の顧客の約2割が期待
クレジットカードに対する期待(複数回答)として今年新たに加えた2項目のうち「タッチ/コンタクトレス決済」を期待する顧客は全体では14%、「カードおもて面でのカード番号や名義などの非表記」は全体では11%だった。
<年会費2万円以上>の顧客では「タッチ/コンタクトレス決済」22%、「カードおもて面でのカード番号や名義などの非表記」17%と他の部門よりも期待が高かった。
「タッチ/コンタクトレス決済」を期待する顧客は「サインレス決済」「スマートフォンによる決済」「カードおもて面でのカード番号や名義などの非表記」「セキュリティ対策の強化」も期待する割合が高く、利便性とセキュリティ対策を同時に求めていることがわかった。
「本年調査ではクレジットカード会社のウェブサイトやモバイルアプリから各種サービスの案内やキャンペーンの紹介などの情報収集に積極的な顧客において、年会費の満足度が大きく低下していることが指摘されているが、こうした背景にはコロナ禍での生活様式の大幅な変化があるものと考えられる。
コロナ禍で非日常利用から日常利用にクレジットカードを使う場がシフトするなかで、高額利用者のニーズに合致した情報提供が行われておらず、それが満足度の低下につながっている可能性があるものと思われる。
また、新型コロナの影響を受けた特典の見直しなどにより、年会費に見合うサービスの情報提供ができているかについても各社とも確認の必要があると考えられる。」
元のレポート:『J.D. パワー 2021年クレジットカード顧客満足度調査SM』
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