デジタルシフトが進み、リモートワークなどが普及した現在は、これまでの時代よりも「個」としての自分を強く問われる時代になります。自分を構成する要素としての「個」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。※本連載は、久恒 啓一氏の著書『50歳からの人生戦略は「図」で考える』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

〈わたし〉は、公・私・個、3つの軸でできている

民主主義は一人ひとりの「個」としての自立を前提とします。

 

Zoomの世界など、デジタルシフトが進む昨今では、あらゆる制約にとらわれない「個」の存在がこれまで以上に問われるようになります。

 

では、「個」の存在とは、どのようなものでしょうか。現実の世界を生きる〈わたし〉は、3つの軸で成り立っています。それは、「公」と「私」と「個」です(図表参照)。

 

[図表]人生=公人+私人+個人

 

「公」は、国や社会、所属する組織などに関する立場やことがらのことです。ビジネスパーソンの場合、「公=仕事における〈わたし〉」と考えていいでしょう。

 

「私」は「公」を離れた私生活における立場やことがらのことです。結婚をして家庭を持っていれば「私=家庭における〈わたし〉」が中心になるでしょう。

 

結婚しておらず、家庭を持っていなければ、親兄弟姉妹などとの家族関係、恋人や友だちとの関係が大きな比重を占めるでしょう。

 

「公私混同」「公私のけじめをつける」「公私ともどもお世話になっています」といった表現があるように、「公」と「私」は日常的に意識されます。

 

ここに、もう1つ加えなければならないのが、「個」の概念です。公人は「仕事をする〈わたし〉」、私人は主に「家庭のなかでの〈わたし〉」であるとすれば、個人は「自己としての〈わたし〉」といえるでしょう。

 

よく、働き盛りの子育て世代は、「公」と「私」にほとんどの時間とエネルギーをとられ、「個人としての時間がない」などといいます。この場合の個人としての時間の対象になるのは、趣味であったり、自己学習であったりするでしょう。

 

ただ、ここでいう「個」は、もう少し深い意味を持ちます。「自分は何者であるか」というアイデンティティー、「自分は何のために生きるのか」「どうありたいか」という存在意義を表す。ひと言でいえば、「主体的な自己」を意味します。

ポストコロナの時代では、より「個」の自分が問われる

ここで注目すべきは、ポストコロナ社会における働き方の変化は、この「公・私・個」のトライアングルにどのような影響を及ぼすのかということです。

 

テレワークによるリモート勤務が世界的に広まり、日本でも多くの企業が一定割合で継続させる動きを見せています。各種の調査によれば、在宅勤務経験者の9割が継続利用を望み、「通勤がないため時間が有効に使える」と答えています。

 

働き方のニューノーマルとして、リモート勤務や在宅勤務が定着していったときに生じる変化は、自宅で「公・私融合」の状態が生まれることと、自由に使える時間が増えることです。ここで、これまで以上に問われることになるのが「個」の存在です。

 

毎日通勤するこれまでのノーマルでは、職場でn人のなかの1人、すなわち、「n分の1」として仕事をするため、日常的には「個」を意識しなくてもすみます。

 

これに対し、在宅勤務は「1分の1」の世界であり、仕事における「個」を意識させられる機会が増えてきます。テレワークによるWeb会議では前述のような民主主義的な状態が生まれるため、「個」としての発言が問われます。

 

そして、増大した自由時間をどのようなことに投じるか。仕事に使って自分の成果に結びつけるか、日本の企業でも解禁が相次ぐ副業を始めて収入やキャリアのアップを目指すか、家族とともに過ごす時間を増やすか、趣味や自己学習に振り向けるか、地域活動やボランティアなどの社会活動に参加するか…等々。このとき、「自分は何をやりたいのか」という、「個」としての自分が問われることになる。

 

ニューノーマルの時代においては、Zoomの世界に象徴されるデジタルの時空間だけでなく、リアルの世界においても、これまで以上に「個」の存在が問われることになるのです。

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50歳からの人生戦略は「図」で考える

50歳からの人生戦略は「図」で考える

久恒 啓一

プレジデント社

「人生鳥瞰図」で仕事も人生もうまくいく! 大人のためのキャリアデザインの教科書。 私は日本人の「アタマの革命(図解)」と「ココロの革命(遅咲きの人物伝)」の二つをライフワークとしている──。 こう語るのは、…

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