日本人が「つまらない、くだらない」とぼやきながら仕事をする理由 (※画像はイメージです/PIXTA)

私たちは「労働」と「遊び」をまったく逆の行為のように考えてしまいがちですが、この二つは本人の捉え方でどちらにでもなり得ます。今後、労働と遊びの境界はなくなっていくというが…。※本連載は山口周著『ビジネスの未来』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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大きな成果を生み出した人々をインタビュー

■コンサマトリーとゾーン

 

私たちの「仕事」が「明日のために今日の辛い労働に耐える」というインストルメンタルな思考・行動様式から、「今日の充実のために夢中になれる仕事に取り組む」というコンサマトリーなそれへと転換することでまた、個人の創造性もまた大きく花開くことになるでしょう。ここではポジティブ心理学の創始者の一人であるハンガリー出身のアメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイの論考を引いて考えてみましょう。

 

人が、そのもてる創造性を最大限に発揮して、人生の充実感を覚える時というのは、どのような状況なのか。これが、チクセントミハイが研究において追求した「論点」でした。チクセントミハイは、故国ハンガリーの人々が、第二次世界大戦後の荒廃のなかで生の充実感を喪失し、社会全体が失望と不幸の底に沈降していく様を見て、このような問いを立てたとTEDのなかで述べています。

 

チクセントミハイは、この問いに答えるために、非常にシンプルな研究方法を採用しています。すなわち、仕事を通じて大きな成果を生み出し、世界的な名声を獲得している芸術家、音楽家、作家、研究者、外科医、経営者、アスリート、チェスプレイヤーといった人々に、ひたすらインタビューして回ったのです。

 

このインタビューにおいて、チクセントミハイは「あること」に気づきます。それは、分野の異なる高度専門家たちが、最高潮に仕事に「ノッている」時に、その状態を表現する言葉として、しばしば「フロー」という言葉を用いる、ということでした。チクセントミハイは、彼ら専門家の用いたこの言葉をそのまま引いて、のちに「フロー理論」として広く知られることになる仮説をまとめました。

 

チクセントミハイによれば、フローの状態、いわゆる「ゾーン」に入ると次の9つのような現象が発生することを報告しています。

 

1.過程のすべての段階に明確な課題がある
2.行動に対する即座のフィードバックがある
3.挑戦と能力が釣り合っている
4.行為と意識が融合する
5.気を散らすものが意識から締め出される
6.失敗の不安が意識から消え失せる
7.自意識が消失する
8.時間感覚がなくなる
9.活動と目的が一体化する

 

ここまで読んでいただければもうおわかりでしょう。そう、コンサマトリーな状態というのは、チクセントミハイの言葉でいう「フロー状態」とほぼ同義なのです。

 

ライプニッツ 代表 独立研究者
著作家
パブリックスピーカー

1970年東京都生まれ。神奈川県葉山町に在住。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史専攻修士課程修了。

電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ともにダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。

(的野 弘路=撮影)

著者紹介

連載日本人はコロナ後の世界をどう生きるべきか

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

山口 周

プレジデント社

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか? 21世紀を生きる私たちの課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではない…

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