(※写真はイメージです/PIXTA)

自分の希望通りの相続を叶えるためには、早めに準備をすることが大切です。本記事では、「遺言信託」を活用して、子どもがいない夫婦が、自分と配偶者が死亡したあと、自分の財産は自分の甥と姪だけに相続させる方法を見ていきます。※本連載は、宮田浩志氏の著書『相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本』(近代セールス社)より一部を抜粋・再編集したものです。

相互に「遺言信託」を設定すると、柔軟な相続が可能に

Q. 子供のいない村上孝太郎(68歳)と妻美子(60歳)は、ともに医者として財をなし、それぞれが1億円近い金融資産を保有しています。孝太郎は、もし自分が先に亡くなったらいったん美子に相続させたいが、美子も亡くなった後は、元々の自分の財産分(1億円程度)は、自分の甥孝介と姪孝子に遺してあげたいと考えています。

また、美子も同様のことを考えていて、もし自分が孝太郎より先に亡くなったら、いったん孝太郎に遺産を相続させたいが、孝太郎も亡き後は、元々の自分の財産は、自分の甥美史と姪優美に遺したいと考えています。

「自分の亡き後はすべて配偶者に相続させる」旨の遺言を双方が作るだけでは、夫孝太郎と妻美子のどちらが先に亡くなるかで、莫大な資産を受け取る親族が決まるという、不安定な状況になってしまいます。

なお、親族関係は非常に良好で、孝介・孝子・美史・優美は相互に交流もあり、孝太郎と妻美子の将来の介護についても、孝介・孝子・美史・優美が協力してサポートする旨の話合いはできています。

 

<解決策>

村上孝太郎は、遺言において信託を設定します。その内容は、自分が妻美子より先に亡くなった場合、全財産を信託財産として設定し、甥美史を受託者にして財産を託します。受益者を妻美子にし、美子の生存中は甥美史が信託財産から必要に応じた財産給付を行い、美子の生活・介護のサポートおよび財産管理全般を担うこととします。

 

そして、甥美史がきちんと財産の管理と給付をしているか監督する立場として、司法書士Mを信託監督人に設定します。妻美子が亡くなったら信託が終了するように定め、信託の残余財産の帰属先を甥孝介および姪孝子に指定します。こうすることで、孝太郎が医師として築いた財産は、孝太郎側の親族に承継することができます。

 

また妻の美子も、遺言書において同様の信託を設定します。その内容は、自分が夫孝太郎より先に亡くなった場合、全財産を信託財産として設定し、甥孝介を受託者にして財産を託します。受益者を夫孝太郎にし、孝太郎の生存中は甥孝介が信託財産から必要に応じた財産給付を行い、孝太郎の生活・介護のサポートおよび財産管理全般を担うこととします。

 

そして、司法書士Mを信託監督人に設定し、甥孝介がきちんと遺産の管理をしているか監督させます。夫孝太郎の死亡により信託が終了するように定め、信託の残余財産の帰属先を甥美史および姪優美に指定します。

 

【信託設計】

孝太郎の遺言信託
委託者:故 村上孝太郎
受託者:高嶋美史(美子の甥)
受益者:村上美子信託監督人:司法書士M
信託財産:孝太郎所有の全財産
信託期間:妻美子が死亡するまで
残余財産の帰属先指定:甥孝介および姪孝子

※ただし、美子が先に死亡していた場合は、信託は効力を生じず、全遺産は甥孝介および姪孝子に遺贈する。

 

妻美子の遺言信託
委託者:村上美子
受託者:村上孝介(孝太郎の甥)
受益者:村上孝太郎
信託監督人:司法書士M
信託財産:妻美子所有の全財産
信託期間:孝太郎が死亡するまで
残余財産の帰属先指定:甥美史および姪優美

※ただし、孝太郎が先に死亡していた場合は、信託は効力を生じず、全遺産は甥美史および姪優美に相続させる。

 

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相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本

相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本

宮田 浩志

近代セールス社

家族信託は、不確定要素や争族リスクを最小限に抑え、お客様の資産承継の"想い"を実現する手段として活用できます。それには、家族信託を提案・組成する専門家は実務知識を、利用を検討する人は仕組みを十分理解しておく必要が…

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