(※写真はイメージです/PIXTA)

財産を希望に沿った形で相続するには、「信託」を活用する方法が有効です。本記事では、障害者や未成年者を守るための「福祉型信託」について見ていきます。※本連載は、宮田浩志氏の著書『相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本』(近代セールス社)より一部を抜粋・再編集したものです。

78歳父親、「親亡き後問題」の事前対策しておきたい

Q. 山下潔(78歳)は、妻輝子(72歳)と障害のある一人息子太郎の3人家族です。潔は、自分と輝子が太郎の面倒をみれなくなった後の太郎の生活を心配しています。また、太郎は障害により、遺言書を書けるだけの理解力はありません。

潔は、自分・妻輝子・一人息子太郎がすべて亡くなった後に残った資産があれば、それを長男太郎がお世話になった障害者施設を運営する社会福祉法人への寄付を希望しています。

 

<解決策>

山下潔は、今のうちから信頼できる長男太郎の法定後見人候補者(司法書士M)を探し、あらかじめ法定後見人に就任してもらいます。同時進行で、潔は、信頼できる親戚の小泉との間で信託契約公正証書を締結します。

 

その内容は、潔が委託者=当初受益者とし、潔の亡き後は第二受益者を妻輝子にし、さらに輝子の亡き後は第三受益者を太郎にして、太郎の生活・療養に必要な資金は、受託者小泉から後見人の司法書士Mに必要に応じて給付するようにします。

 

また、潔、輝子および太郎全員の死亡により信託が終了するように定め、信託の残余財産の帰属先を社会福祉法人に指定しておきます。これにより、輝子および太郎が生存中に使いきれず残った財産は、最終的に国庫に没収されることなく、潔が希望する社会福祉法人へ譲ることが可能となります。

 

【信託設計】
委託者:山下潔
受託者:小泉
受益者:①山下潔②山下輝子③山下太郎
信託財産:自宅および現金
信託期間:潔、輝子、太郎の全員が死亡するまで
残余財産の帰属先:社会福祉法人
太郎の法定後見人:司法書士M

 

<要点解説>

本事例のように障害のある子を抱える家族の問題を「親なき後問題」といいますが、この問題に対処するには、家族信託や遺言という手段だけでは不十分なこともあります。その場合は、あえて家族信託と成年後見制度を併用して、遺された障害のある子の長い人生をサポートする仕組みを早い段階から構築することが重要です。

 

潔および輝子が元気なうちから法定後見制度を利用することで、高齢の潔夫妻の長男太郎に対する負担を極力軽減させることができます。また、潔夫妻は、法定後見人である司法書士Mに対して、太郎の生い立ちや趣向、どのような方針で身上監護・財産管理をしてほしいか等、様々な情報・希望を直接伝えることができ、司法書士Mが法定後見人としてしっかり業務執行をしている姿を見て安心できます(両親亡き後に知らない人間が息子の後見人になるという漠然とした不安を解消できる)。

 

さらに、将来的に潔夫妻が太郎の面倒をみれなくなった場合でも(両親が亡くなる前のこの時点でもいわば「親なき」状態といえる)、司法書士Mが潔夫妻に代わって障害者向けグループホームへの入所手続きをするなど、太郎の身上監護(身上保護)を担うので、太郎の生活に支障が生じないスムーズな対応が可能となります(両親が支えきれなくなってから、あわてて太郎に後見人を就けようとしても、数ヵ月間の対応できない期間が生じる可能性がある)。

 

太郎に遺言能力がないため、通常の相続をすると潔夫妻の資産がすべて太郎に集約されたのち、太郎の亡き後に残った財産は相続人不存在としてすべて国庫に帰属してしまいます。この場合、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」の仕組みを駆使することで、民法上の単なる遺言では実現できない、潔夫妻の希望を反映させた財産承継の道筋を作ることが可能となります。

 

なお、信託受託者の地位と法定後見人の地位を同じ親族が兼ねるということも理論的には可能ですが、親族への過度な負担を避ける意味でも、また受託者への監督機能を働かせるという意味からも、受託者は親族、後見人は別の親族または職業後見人に頼むほうが好ましいと思われます。

 

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