(※写真はイメージです/PIXTA)

自分の希望通りの相続を叶えるためには、早めに準備をすることが大切です。本記事では、「遺言信託」を活用して、子どもがいない夫婦が、自分と配偶者が死亡したあと、自分の財産は自分の甥と姪だけに相続させる方法を見ていきます。※本連載は、宮田浩志氏の著書『相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本』(近代セールス社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「任意後見契約公正証書」を作成することがポイント

夫孝太郎が妻美子より先に亡くなった場合、通常の遺言書による相続では、孝太郎の遺産がすべて妻美子に行った時点で甥孝介と姪孝子に相続権がなくなりますので、美子が遺言書で孝介と孝子に財産を遺贈する旨を残していなければ、孝介と孝子は一切の財産を受け取れません。美子の遺産についても同じことがいえます。

 

つまり信託を設定しない場合、孝太郎と美子のどちらが長生きしたかで、夫婦が最終的に遺した遺産の受取人が異なるという事態になるのです。そこで、前記のように孝太郎と美子がそれぞれ自分の遺産について相互に遺言信託を設定することで、円満な関係である双方の親族に公平な遺産の承継が可能になります。

 

また、夫婦で遺言を作成する際に、同時に任意後見契約公正証書も作成しておきます。具体的には、孝太郎は姪孝子を受任者とする任意後見契約を、美子は姪優美を受任者とする任意後見契約を締結しておきます。

 

もし、美子が将来的に認知症等で判断能力が低下し必要に迫られた場合は、任意後見契約を発動し(任意後見監督人選任審判を受け)、優美が任意後見人に就任します。もともとの美子固有の財産については任意後見人優美が主体となって管理し、(孝太郎がすでに亡くなっていれば)信託財産となった孝太郎の遺産については、受託者の甥美史が管理する形になります。

 

つまり、実質的には美史と優美が協力して美子の生涯にわたる財産管理を担うことになりますし、身上監護(身上保護)については、任意後見人となった優美が主体となって行うことになります。

 

これとまったく同様に、もし孝太郎が認知症等で判断能力が低下し必要に迫られた場合は、任意後見契約を発動し、孝子が任意後見人に就任します。もともとの孝太郎固有の財産については任意後見人孝子が主体となって管理し、(美子がすでに亡くなっていれば)信託財産となった美子の遺産については、受託者の孝介が管理する形になり、孝太郎の生涯を孝介と孝子が協力して支えてくれることになります。

 

なお、孝太郎および美子の遺言の中で、遺産を調査したうえ負債を清算し、残った遺産を信託財産として受託者に引き渡すまでの役割は遺言執行者が担うので、その部分は信頼できる司法書士Mを遺言執行者に定めるとよいでしょう。

 

もし、孝太郎が亡くなった時点で、すでに美子が死亡していた場合は、孝太郎の遺言信託は効力を生じず、元々の孝太郎の財産分(1億円程度)は、自分の親族である甥孝介と姪孝子に遺贈することになります。一方、孝太郎と美子の死亡する順番が反対の場合は、美子の遺言信託が効力を生じず、シンプルに美子の甥姪に相続させることになります。

 

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相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本

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宮田 浩志

近代セールス社

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