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平均気温が4℃上昇した場合、10年に1度の高温が観測される頻度は9.4倍
国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は8月9日、気候変動に関する作業部会の報告書(第6次評価報告書)を公表した。今回の報告書では、地球温暖化の原因が人類によって排出された温室効果ガスであることについて、「疑う余地がない」と初めて断定された。また、2011~20年の世界の平均気温が産業革命前と比較してすでに1.09℃上昇したとし、さらに2021~40.年に世界の平均気温の上昇が1.5℃に達してしまうとの予測も公表した。
温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」では、産業革命前と比較して世界の平均気温の上昇を2℃より十分低く保つとともに、1.5℃以下におさえることを努力目標としている。IPCCの報告書はこの努力目標がすでに達成困難になりつつあることを浮き彫りにした。
懸念されるのは異常気象の頻度だ。報告書では1850~1900年の間で10年に1度の頻度で観測された異常気象の頻度が、気温上昇とともに今後増加することが指摘されている。世界の平均気温が1.5℃上昇するケースでは、異常気象の頻度は高温で4.1倍、干ばつで2.0倍、豪雨で1.5倍になるが、平均気温が4℃上昇するケースでは、高温で9.4倍、干ばつで4.1倍、豪雨で2.7倍にもなる(図表1)。
気候変動リスクを考慮した経営が至極当然の時代に
気温上昇を背景とした異常気象の頻度が高まることは、企業にとっても経営上のリスクとなる。例えば、異常気象の頻度が増えればサプライチェーンが寸断されたり、生産ラインが中断してしまうケースが想定される。また、農作物を生産する企業であれば、高温や干ばつによって生産量が減少してしまう可能性もある。農作物を生産しない企業であっても、例えば半導体の生産には大量の水を使用するため、水不足が半導体サプライチェーンを通じて自動車やPC、データセンターなど様々な業界に波及するリスクがある。
世界では企業が直面する気候変動リスクの開示を義務化する方向で検討が進んでいる。各国の中央銀行や金融当局、国際機関が参加するFSB(金融安定理事会)が設立したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が、企業に対して気候変動リスクの情報開示を促している。具体的には気候変動リスクを「移行リスク」と「物理的リスク」に分けて開示することを提言している(図表2)。
「移行リスク」とは二酸化炭素排出量の制限といった環境規制強化などに伴うリスクであり、「物理的リスク」とは前述した異常気象の頻発等によって事業の継続が困難になるリスクなどが該当する。英国では今年1月より主要企業にTCFD提言に沿った開示が義務化されたほか、日本でも22年4月から東京証券取引所の「プライム市場」の上場企業にTCFD提言に基づく開示を求める。米国でもSEC(証券取引委員会)が同様の基準作りを目指している。もはや気候変動リスクを考慮した企業経営が至極当然の時代になりつつある。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『気候変動リスクを考慮した経営は至極当然の時代に』を参照)。
(2021年8月16日)
田中 純平
ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト
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