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総選挙の時期:与党内で強まる先送り論
五輪閉会式前後に行われた朝日新聞、読売新聞、NHKの世論調査では、東京オリンピックについて肯定的な見方が過半数を超え、反対意見が多数を占めた大会前とは対照的な結果になった。一方、菅内閣の支持率は軒並み低下、昨年9月の発足以来の最低水準へ落ち込んでいる(図表1)。五輪への共感は政権への支持には結び付かなかったようだ。
これまで繰り返し報じられてきた通り、衆議院の任期満了は10月21日である。総選挙が間近に迫るなか、世論の厳しい反応を受け、自民党内では危機感が高まっているだろう。内閣支持率が低下している要因は、明らかに新型コロナの感染拡大と考えられる。従って、ワクチン接種の進捗を睨み、総選挙の時期を可能な限り先送るべきとの意見が急速に勢いを増している模様だ。
ちなみに、公職選挙法第31条1項では、衆議院が任期満了を迎える場合、原則として「その日の前の30日以内」に総選挙を行わなければならない。しかし、同条第3項の規定により、任期満了日まで国会を開いて最終日に解散するならば、11月28日まで総選挙を先送りできる。自民党と連立を組む公明党内にも、11月総選挙論が強まっている模様だ。
菅首相の自民党総裁としての任期は9月末で終わる。11月総選挙の場合、先ず自民党総裁選、続いて総選挙の順番になるだろう。これだと、先に解散・総選挙を実施して自民党の議席減を30程度に食い止め、無投票で総裁選の再選を目指す菅首相のシナリオが狂うのではないか。従って、パラリンピック終了後の9月6日以降、同首相が電撃的な解散を狙う可能性は否定できない。
ただし、それには新型コロナ感染第5波のピークアウトが条件になるだろう。逆に考えれば、感染拡大が続き、今後の世論調査で内閣支持率がさらに低下した場合、自民党内では「菅首相がリーダーだと総選挙を戦えない」として、早期の総裁選を求める声が強まると予想される。
次の転換点:パラリンピック後、政局は一気に流動化へ
菅首相にとっての救いは、1)野党の支持が低迷していること、2)自民党内の有力後継候補が総裁選への対応を明らかにしていないこと…の2点だ(図表2)。もっとも、立憲民主党と共産党が広範に選挙協力した場合、自民党への脅威になり得ることは、7月4日の東京都議会議員選挙で確認された。両党は候補者調整に手間取っており、これも菅首相に早期解散の決断を促す要因と言えそうだ。
他方、自民党内に目を転じると、次期総裁の有力候補と目される岸田文雄前政調会長、茂木敏充外相などは、今のところ総裁選への態度を明らかにしていない。ただし、夏休み期間が終わった後、世論の流れによっては政局が一気に流動化する可能性がある。9月以降、日本の政治が大きく動き出す展開が予想されるなか、それが経済・市場に与える影響には注意が必要だろう。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『解散、総裁選、どちらが先か?』を参照)。
(2021年8月13日)
市川 眞一
ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー
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