数値・データ系、IT関連、医療関連の専門職が上位独占
これからの仕事のことを考えるにあたり、アメリカではどんな仕事が「良い仕事」とされているのか見てみましょう(図表1)。
図表1は1〜10位のランキングですが、ランキング30位程度までを見ても、上位を占める仕事の傾向がはっきりしています。
最も将来性があり、ストレスが少なく、なおかつ収入も良いのは、「数値やデータを扱う仕事」「IT関連の仕事」「医療関連の専門職」の3つのカテゴリーです。つまり、専門性が高く、知識産業や医療などの付加価値の高いサービス業は、今後も伸びる可能性が高く、かつ、就労環境も良いわけです。
「大学教員」が入っているのが意外かもしれませんが、これは情報化が進む中で、より高スキルを身につける必要が高まっているためです。コロナ禍後はスキルの高度化がさらに必要になっているので需要は益々高まるでしょう。デジタル化が進むので、教員は必要ないだろうと思われる方がいるかもしれませんが、高度に細分化したスキルを教育するにはデジタルな形であっても、カスタマイズした指導やカリキュラムの作成が必要です。
「機能訓練師」はリハビリを指導する仕事ですが、これは先進国はどこも高齢化していることと大いに関係があります。実はアメリカも高齢者が増えているので、機能訓練の需要が高まっています。このような訓練はデジタル化できませんので、どうしても対面で指導する必要があります。
「ITセキュリティアナリスト」も日本では馴染みがない方が多いかもしれませんが、IT化が進むほど安全なシステム運用の必要性が出てきます。コロナ禍でデジタル化がさらに進みましたので、この職業の需要は益々高まります。
「オペレーションズリサーチアナリスト」は馴染みがない方が多いかもしれませんが、これは製造や流通、サービスなどの工程を企画、設計、調査、改善する仕事です。デジタル化が進み、コロナ禍で自動化や合理化が進んでいますから、ものを運ぶ仕組み、製造する仕組み、サービスを提供する仕組みを考えたり精査する人の需要はさらに高まります。
最近話題のAIが「職業名」として入っていませんが、「AIの下地となる作業をする職業」がランキングに入っていることに気づかれたでしょうか? データサイエンティストや数学者がまさにそれで、AIを設計したり仕組みを作る職業の需要はさらに高まっていきます。
またこれらのランキングは2020年のコロナ禍以前に作成されたものですが、コロナ禍でデジタル化が急速に進んでいるので、「数値やデータを扱う仕事」「IT関連の仕事」「医療関連の専門職」の需要は益々高まります。2020年後半には、amazonを始めとするIT系大手の収益は大幅に増加し、コロナ後の世界の勝ち組となったことからもわかります。一方で、小売業などの「物理的な接触が必要な仕事」の需要は低下する一方です。
また3つのカテゴリーの他に、日本の人が注意してこの表を見るべき点は、企業名ではなく、あくまで「職業」分類でランキングが作成されている点です。
日本の「仕事」ランキングは、通常企業名でのみランキングされ、まるで「企業ミシュラン」のようになっていますが、常識的に考えた場合、企業の業態や市場の動きが変われば、企業内で仕事の需給に変化があるのですから、しごく当然の話です。
北米や西側欧州では、同じ企業内でも職種により報酬も待遇も変わるので、ランキングが職業別に作成されるのは当たり前のことです。