恐ろしい…院長父の不動産が「医師一家」をバラバラにした事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

鈴木さんは2人きょうだいで、姉がいます。姉は、鈴木さんの妻や子どもと大変仲が良く、毎週日曜日には必ず鈴木さん宅を訪れ、たわいもないおしゃべりをし、お茶を飲んで帰っていきます。姉の住んでいるB市は、A市から電車で約1時間離れていますが、鈴木さん宅への訪問は、週に1度、姉の楽しみとなっていて、欠かさないものとなっていました。ある日、テレビ番組で「エンディングノート」「遺言」などの相続に関することが採り上げられていたのを見て、「もうすぐ85歳になる父親に遺言を作っておいてもらうよう頼もう」という話が持ち上がりました。鈴木さんと姉は、その話をするために、2人揃って父親のもとを訪れたところ、父親は快諾。遺言の内容は、鈴木さんと姉で決めてよいということになりました。

気持ちのこもった遺言の内容は?

鈴木さんの家は、代々医者の家系で、「A市の鈴木病院」といえば、地元では知らない人はいないほどです。鈴木さんの父親は、鈴木病院の3代目院長で、現在は、現役を退いています。財産は、金融資産とA市にある自宅の土地・建物のほか、C市にある貸駐車場を所有。病院は法人化されていて、土地建物は法人名義になっています。

 

話し合いをするまでもなく、小さな頃から、長男である鈴木さんが自宅を、姉が駐車場をもらうことが鈴木家では、共通認識となっていました。遺言を作成することになり、鈴木さんは、「相続やお金のことは何も分からない」という姉に対して、次のような提案を行いました。

 

①長男である鈴木さんが自宅を相続

 

②金融資産は等分にする

 

③姉がもらう予定だった駐車場用地は、姉の住まいから貸駐車場までは距離があり(B市とC市は約50キロ離れている)、管理が難しいために、父名義のまま売却をする。現金化された資産は②の金融資産に加える

 

④自宅の名義は長男が相続するが、相続税評価額を等分にするために、自宅の土地建物の評価額の半分を、長男が現金で姉に渡す

 

④は、「貸駐車場の管理ができない」と話す姉を考慮して考えた内容で、父親も貸駐車場は自分が存命のうちに売却したいと思っていました。「自宅の土地建物の評価額の半分を、長男が現金で姉に渡す」という案は、姉のことを思った弟としての配慮から考えたものでした。姉は「ありがとう」と私の前で弟に感謝の意を述べ、遺言書作成により、この家族は幸せになるのだと思いました。

「1円でも多くもらいたい」姉のひと言で、絶縁状態に

それから、数日経ったある日、鈴木さんのお姉さんから電話がありました。「息子に話したら、その内容で承諾してはダメだ」と言われたというのです。理由は、提案した内容では、姉の取り分が少なく、土地をもらったほうが得になるからだといいます。

 

不動産の売却査定額と相続税評価額は

 

①父親の自宅(土地・建物)の売却査定額は、約7,140万円額相続税評価額は合計で5,000万円

 

②駐車場用地(収益率は良くないので考慮しない)の売却査定額は、約8,000万円程度、相続税評価額は約5,600万円

 

であるため、

鈴木さんの提案通り相続した場合のお姉さんが受け取る金額(もとからあった金融資産を除く)は、

 

(5,000万÷2)+4,000万円=6,500万円

 

であるのに対し、

 

お姉さんが貸駐車場を相続した後に売却した場合は、

 

貸し駐車場の売却代金8,000万円

 

が手に入るというのです。

 

姉を思いやった自分の遺産分割案を却下された鈴木さん。姉に電話をかけると「私は1円でも多くお金をもらいたい」と言われ、すぐさま電話を切られたそうです。これには、鈴木さんも激怒し、その後、2人は絶縁状態になってしまい、遺言作成はストップしてしまいました。

「等分」にするのが難しい不動産

姉が主張したことは、一見正しいように思えますが、100%その主張が正しいと言えません。

 

C市にある貸駐車場は、郊外のロードサイドにあり、オリンピックの競技会場の近くで、一時的に物件価格が高騰しているエリアにありました。そのために、姉が相続した後に売却した際に、も8,000万円以上になる保証はありません。むしろ、オリンピック効果が落ちついてしまい、8,000万円以下になる可能性のほうが高いのではないかと思います。

 

不動産の評価額が同じでも、売却価格は異なりますし、その逆もあります。売却価格は市場価格であるために、同じ不動産でも売却時期や外的要因によって、金額は大きく異なります。そのために、相続の場合は、不動産を評価額で算出するケースがほとんどで、姉は、このことを理解しておらず、額面だけみて、欲がでてしまったのでしょう。

 

不動産はひとつとして同じものがないため、等分に分けることが非常に難しいです。「相続のときに不動産があると面倒だ」と言われる理由です。鈴木さんの父親は、まだ意思判断能力がしっかりしている人です。子どもたちの騒動を見て、「子どもに財産は残さないほうがいいな」とつぶやいていました。
 

 

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

不動産コラムニスト、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、家族信託コーディネーター®

日本女子大学卒。オフィスヨシイ 代表。現役で不動産取引も行う傍ら、不動産にまつわるコラムを執筆。賃貸、売買、用地仕入れ、不動産投資、不動産コンサルなど、不動産に関する業務を幅広く経験。実体験に基づく、地に足のついた、分かりやすいコラムが好評


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