いつまで続くのか分からず、「出口の見えないトンネルのなかにいるよう」とも言われる不妊治療。女医の山下真理子氏も、そんな不妊治療で子供を授かったひとりだという。どのような問題に直面し、どう向き合ってきたのか、医師の立場から語ってもらう本連載。第3回目は「特別養子縁組」で子供を迎えるという選択肢について、当時の心境を交えて解説してくれた。

体外受精でついに妊娠

ちなみに、結果から言うと、私たち夫婦は、特別養子縁組ではなく、体外受精で妊娠して、実子を授かった。

 

「我が子は可愛い」という言葉の意味もわかったし、自分やパートナーに似たところを見つけては嬉しくなる気持ちもすごくわかった。

 

妊娠がわかった時の喜びも、少しずつ大きくなっていくお腹に、毎日ワクワクする反面、不安だったことも、今では懐かしい。 

 

悪阻はすごくつらかったし、お腹が大きくなって日常動作が思うようにできなくてもどかしかったことも、初めて胎動を感じて、胎動があるたびに、「命」を感じてワクワクしたことも、出産の直前、「蹴り」がものすごく強くて、お腹を触ったら、赤ちゃんの足の形がわかったことも、全部一生忘れない大切な思い出。

 

帝王切開で生まれてきた我が子を見た瞬間、今までの価値観が全て変わった。大変なことも全部が幸せで、「この子のためなら」と思うとどんなことも頑張れる。

 

特別養子縁組の説明会が終わった後、私とパートナーは、「3回体外受精を試みて、もし成功しなかったら、養子をもらおう」と決めた。

 

結果的に、そのあと行った体外受精で、妊娠した。

 

1つだけ採れた卵が、なんとか受精卵になった。けれどもその受精卵は、上手く育つことなく、途中で卵割が止まってしまっていた。

 

「おそらく成功するのは非常に確率が低い」

 

そう言われた。私は、1%の可能性にかけたくて、「分割期胚」と言われる、卵割が途中で止まってしまった初期胚を、移植した。

 

妊娠して、自分の子供を産んだことは、本当に良かったと思う。

 

けれども、未だに特別養子縁組のことは、忘れたわけではない。

 

いくらお金を積んでも、いくら時間をかけても成功するかどうかは誰にもわからない不妊治療を続けるより、「欲しくなかったのに」と、中絶されてしまう命や、棄てられてしまう命、育てたかったけど育てられなかった子を、自分の家族として迎える制度は、本当に素晴らしいと思う。

二人目は特別養子縁組でも

今私は、二人目を授かりたいと考えている。

 

再び不妊治療をするか、それとも特別養子縁組に向けて動くか、もしくは、両方並行して行うかは、まだ決めているわけではない。

 

「遺伝が全て」「自分の子は可愛い」

 

その言葉もすごくわかる、けれど、一人でも幸せになる命が増えるなら、養子という選択もいいな、と思う。

 

「命を授かる」ことが、本当に奇跡であることを、長男の妊娠出産で心からわかった。

 

だからこそ、「宿った命」を、自分の都合で終わらせてしまうのではなく、幸せになれる選択として、特別養子縁組のことを、一人でも多くの人に知って欲しいなと思う。

 

 

山下 真理子

 

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