(※写真はイメージです/PIXTA)

クリニックのビジネスモデルといえば、保険診療をベースとして、プラスアルファの医療サービスとして自由診療を取り入れるのが王道です。しかし、ベストな治療を行うために、自由診療により力を入れたいドクターもいるでしょう。そこで本稿では、自由診療を収益の柱に据える場合、どのような経営戦略を立てるべきかを見ていきましょう。

通常、自由診療が「収益の柱」になることはないが…

保険診療をベースに、プラスアルファの医療サービスとして自由診療を取り入れるのが標準的なクリニックの姿です。自由診療は「収益の柱としてではなく、クリニックに来院してもらうためのきっかけ作り」という位置づけでしょう。

 

では、自由診療をメインに据えたクリニックのビジネスモデルはどのようなものが考えられるか。この経営モデルを目指していなくても、なにか参考になる部分はあると思います。具体的な経営戦略を描いてみましょう。

 

価格勝負か、価格以外で勝負か?

【値決め ライバルクリニックのベンチマーク

公定価格として全国一律の値段が決められている保険診療と異なり、自由に料金を設定できるところが自由診療の魅力です。同じサービス(診療項目)であれば競争原理が働くので、競合となるクリニックのベンチマーク(指標とすること)が基本になります。

 

ただし、インターネット広告等、オープンにされている価格が正規料金ではない場合があるので、実際の価格を調査するようにしましょう。いちばん信頼性が高いのは口コミ情報ですが、患者のふりをして電話やメール相談をしても、ある程度情報収集することはできます。

 

スーパーマーケットと同じように、顧客の多くは価格が安い方に流れていきますが、立地や想定される患者属性(年齢、所得層)を検討し、価格で勝負するのか、それ以外の価値で勝負するのか、方向性を定めます。

 

価格で勝負する場合でも、サービス内容が成熟しているのであれば「安い」ことが売りにはなりません。プラスアルファのサービスを付け加えてお得感を演出できないか、検討してみましょう。一方、価格以外の価値で勝負するのであれば、技術やアメニティの他、スタッフのサービスの質を高め、維持するための投資も必要になるでしょう。

 

自由診療の集客は「ホームページ」が第一

【クーポンによる集客】

美容院等でよく利用される集客ツールに、フリーペーパーやアプリのクーポンがあります。一定の集客効果が認められますが、リピート率の低さがネックになります。バーゲンハンターと同じように、クーポン利用者はクーポンを使えるクリニックを回遊する傾向があるからです。リピート率は低いけれども新規患者数は多い場合等、広告による費用対効果が認められれば、継続的に利用する価値はあります。検証せず、なんとなく継続的に利用することはやめましょう。

 

【広告戦略】

自由診療の集客の柱はホームページです。デザイン性やユーザビリティも重要ですが、SEO対策が命綱となります。クリニック側で行わなければならない日々の更新内容もありますが、狙ったキーワードで検索上位に掲載されるSEO対策は、コストをかけてでもやりましょう。更新頻度の少ないホームページは掲載順位が下がっていくので、日々の更新は怠らないようにしましょう。

 

もう一つ、有効な媒体がフリーペーパーです。地域で発行部数の多いフリーペーパーを2~3社ピックアップし、広告を継続的に掲載しましょう。広告戦略のセオリーは、「人目につく媒体に継続的に掲載する」ことです。広告の費用対効果を測定し続けることでより正確に判断できるようになります。

 

来院患者には問診票等に「なにを見て当院を知ったか」を書いてもらうようにしましょう。その際、なんのフリーペーパーで見たのか、どの看板が目についたのか、ホームページはなんのキーワードで検索したのか、口コミの場合は誰に紹介してもらったか等、媒体を特定できるような内容にするのが理想です。

 

経営の世界は、数値管理が基本です。管理する際は、行動と結果を具体的に検証できるレベルまで落とし込むことで、改善に向かうことができるのです。

 

来院頻度に応じて「患者へのアプローチ」を変更

【「誰に」「なにを」売るのか?】

サービスの販売対象者と商材を決めます。自分が提供したいと考えている商品サービスから入るのではなく、マーケティング調査により市場ニーズを探る方法を考えてみましょう。

 

市場ニーズを考えた場合、「シミ」「たるみ」に関する施術は、美容業界の中では鉄板の商材です。エステではできない医療機関ならではのレーザー治療等は、価格競争に巻き込まれにくいサービスです。機器やスタッフに多額の投資が必要ですが、利益率は高くリピーターの獲得にもつながる有力な商材です。ただし、高価格帯サービスなので、入り口商材として、リーズナブルな価格帯のサービスを準備した方がよいでしょう。低価格帯サービスを体験していただいたうえで、高価格帯サービスへと誘導していくのがセオリーです。

 

次に顧客管理についてです。一度来院した患者(顧客)は個人別に売上を管理していきます。管理方法の一例をご紹介しましょう。

 

***************

(氏名)

(住所:X県Y市→住所は虚偽の場合がある

(年齢、性別)

(利用したサービス:商材の名称と金額)

(来院頻度の管理:年月日)

***************

 

前記のデータを商品別・売上別に管理します。利用金額の多い顧客(いわゆるお得意さま)をピックアップし、定期的にクリニックの告知を行います。DM、メルマガ、LINE等を活用するとよいでしょう。定期的に来院してくれる可能性が高いカテゴリーに属する顧客なので、ルーチンワークとして告知を行います。

 

では、来院頻度の低い顧客へのアプローチはどうすればいいのでしょうか。年に数回の来院の場合、定期的に来院する動機を提供することが必要です。「5回コース」「10回パック」等、まとめて利用することで割安になるサービスメニューを用意し、定期的な来院を促しましょう。リピートが見込める顧客であることを考えて、クーポンを活用することも検討してみてください。

 

さらに、次の階層へのアプローチとしてはイベント的な情報発信が有効です。通常商材(サービス)での訴求が難しい層なので、キャンペーンとしての告知が比較的有効です。

 

さらに来院履歴があることを「特別な顧客」として位置づけ、優待割引を用いてもよいでしょう。

 

ここで重要なのは、やみくもに「値引き」を行わないことです。重要顧客と位置づけられるリピーターには値引きは行わず、サービスを付け加えることで「お得感」を演出しましょう。値引きは、来院頻度の低い顧客を、来院させるための動機づけに留めておく方がよいです。もちろんトータルで利益を確保できるようにメニューを設けることが重要です。

 

柳 尚信

株式会社レゾリューション 代表取締役

株式会社メディカルタクト 代表取締役

 

 

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※本連載は、柳尚信氏の著書『クリニック経営はレセプトが9割』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

クリニック経営はレセプトが9割

クリニック経営はレセプトが9割

柳 尚信

幻冬舎メディアコンサルティング

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