(※写真はイメージです/PIXTA)

かつては「開業すれば何もしなくても儲かる」と言われていた歯科業界ですが、人口減少により患者が減り続けるなかでは、経営力なくして生き残ることはできません。医院を成功させるためにはどうすればよいのでしょうか? 5年間で25医院を開業した歯科院長が、千客万来の秘訣を紹介します。

院長が大切にすべきは、患者さんより「スタッフ」

歯科医院の経営者として、次の三者のうち、誰をいちばんに大切にすべきでしょうか。

 

一、スタッフ

二、スタッフの家族

三、患者さん

 

患者さんは、一般のお店でいえばお客さんです。となれば、多くの歯科医師が患者さん(=お客さん)と答えると思います。私も最初はそう思っていましたが、患者さんを大切にするために、欠かせない人たちがいます。

 

いちばん大切なのはスタッフです。スタッフに一貫性があって、ワンボイスでやる気を出してくれれば患者さんを満足させることができます。そうでないと、患者さんがいくら増えても決して満足させることはできません。だから、その繁盛は一過性のものになってしまうのです。つまり、スタッフを満足させることが患者の満足につながるというわけです。

 

スタッフを満足させるカギは「プライベート」の充実化

では、スタッフを満足させるにはどうしたらいいのでしょうか。

 

それは、スタッフ一人ひとりのプライベートを大切にすることです。その意味でスタッフの家族も大切にしなければいけません。旦那さんであったり奥さんであったり、あるいはお子さん、そしてご両親など…。小さいお子さんがいれば、そのお子さんが急に熱を出すかもしれません。そうしたら早く家に帰らないといけませんし、あるいは仕事を休まないといけません。ご両親の介護で勤務時間が限られてしまうこともあるでしょう。「それは困る」と突き放せば、そのスタッフは困って辞めてしまいます。

 

そうならないためには、スタッフが自分の家族をしっかりと支えることができる職場にしなければなりません。安心して働けるようにしなければいけないのです。そうなって初めて、スタッフたちが患者さんに満足を与えることができるのです。

 

つまり、最終的なゴールは患者さん(=お客さん)の満足ですが、そのためにはまずスタッフの満足を充実させる必要があるということです。カスタマー・サティスファクション(CS)を得るためにはエンプロイー・サティスファクション(ES)が重要であるわけです。それが経営者として考えるべきことです。もちろん、そこまでしても患者さんを大切にしないスタッフは必要ありません。

スタッフへの注意を「後回し」にしてはいけない

診療中のスタッフのミスを認識した場合、その場で注意をすることを心掛けています。もちろん、患者さんの目の前で叱りはしませんが、ミスをしたすぐその時に、患者さんには「ごめんなさい、ちょっとうがいしてもらっていいですか」などと言って、スタッフを廊下などに連れ出して注意します。時には患者さんに聞こえることもあるかと思います。

 

タイムリーに叱らないと、医療は、ちょっとしたミスが大事になります。たとえ本人が気づいていなくても、そうした危険を感じたらすぐに注意しないといけないわけです。その注意を後回しにすると、「さっき、こうだったよね」などと言っても「そうでしたか?」とぴんとこない。なかには、「その時に言ってくれないと分からないですよ」と言い返す人もいます。それでは意味がありません。また同じミスを繰り返す可能性が高くなるので、すぐに注意するように心掛けています。

 

特にルーチンの仕事でそのミスが起こった場合、次の瞬間、次の患者さんのときにも同じミスが起こるかもしれないわけです。基本的な作業は毎日、毎日、どの患者さんでも同じということが多いからです。それを防ぐためには、すぐに、しっかりとそのミスについて理解してもらうことが大切なのです。

 

「今日やったミスは明日もやる」、いや「1分後にまたやる」かもしれないのです。

 

ただ、そのためには患者さんを待たせることになります。叱っている声が聞こえるかもしれませんし、不安にさせたり、不快にさせたりすることもあるわけです。そのミスをもう起こさないことが大切なのです。

 

患者さんからすれば「小声でこそこそ叱る」ほうが不安

人は不安になるのでこそこそされるのを嫌うということを忘れてはいけません。だから、患者さんに聞こえないように話すのではなく、むしろ聞こえる音量で話をします。どうしても聞かせたくないことは小声ではなく、紙に書きます。音量としてはゼロか100というわけです。決して怒鳴るわけではありませんが、私はいつも、患者さんに聞こえてもよいつもりで話します。患者さんの前だからと遠慮はしません。

 

その結果、「すごく怒っていたわね」とあとで患者さんに言われることもあります。一方で「むしろ人間味があっていい」と言ってくれる人も少なくありません。それで客足が増えることはあっても、減ることはないように思えます。

 

私は、なるべく素の自分で仕事をしようと思っています。ドクターと呼ばれる人たちは人前では自分をつくらなければいけないものです。

 

もちろん、仕事はきっちりやらなくてはいけませんが、そのキャラクターがプライベートとあまり変わらなければ、演じる必要がない分、疲れません。だから言葉遣いなども過度には変えません。目上の人には礼儀正しくは普段も同じなので、それでなんの問題もないと思っています。スタッフの呼び方も、普段どおりに。わざわざよそよそしくはしません。

 

 

河野 恭佑

医療法人社団佑健会 理事長

株式会社デンタス 代表取締役社長

 

 

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※本連載は、河野恭佑氏の著書『歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

河野 恭佑

幻冬舎メディアコンサルティング

コンビニエンスストアを1万軒以上も上回る歯科診療所の施設数。 一方で少子化によって患者は年々減少し、過当競争が激化しています。 年間で1600軒もの施設が廃業し、「大廃業時代」といわれる歯科業界で生き残っていく…

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