(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、「ESGインテグレーション」と「フェアバリューの算出・活用の限界」の視点を踏まえたヘッジファンドのロングショート戦略について考えます。

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伝統的ファイナンス理論では、適正価格の算出は限界?

伝統的ファイナンス理論における「効率的市場仮説」では、市場参加者は合理的な投資家であることを仮定している。しかし、人間はいつも合理的に判断するとは限らず、現実には、非合理的な投資行動をとる人間はたくさんいる。

 

この伝統的ファイナンス理論では、ファンダメンタルズ分析を活用する投資家を概ね合理的な投資家と想定しているが、投資バイアスの存在や次のようなフェアバリューの算出・活用の限界などもあり、そもそもファンダメンタルズ派が実際、合理的な投資判断と投資行動を行うことができているかは疑問である。

 

【フェアバリューの算出・活用の限界】
① どのバリュエーション指標を使うかで結果(理論株価)が異なる
(例:PERの理論株価とPBRの理論株価の違い)
② 理論株価を構成している要素の前提が変化すれば、理論株価は大きく変わる
(例:割引率、キャッシュフローの前提など)
③ 将来の期待部分は事後的にしかわからない(予想の間違い)
(例:EPSの算出の前提の売上高の予想はできても、実際の決算数字がその水準に着地するかどうかは事前にわからない)
④ 正しいフェアバリューを算出していても、その期間に株価はフェアバリューに回帰するとは限らない

 

なおかつ、時間軸の長期化による業績価値の変化やESG要因によるバリュエーション面の変化が加われば、さらに市場が確からしいと思うフェアバリューが一段と変化し、ESGの要素を考慮しない従来のファンダメンタルズ派が算出したフェアバリューに市場価格が長期的に均衡しなくなる可能性も生じる。

 

その過程でファンダメンタルズ派の信頼度が低下し、ファンドの解約などの需給要因も相まって財務情報に基づくフェアバリューと市場価格が一段と乖離する可能性もあろう。そのような可能性を収益につなげようと考えているロングショート型のヘッジファンドもあるようだ。

 

この場合、市場が確からしいと思う①ESGインテグレーションに基づくフェアバリューと、②財務情報のみで算出されたフェアバリューおよび③実際の株価との位置取りを勘案し、ロングショート戦略を実施することなどが想定される。たとえば、

 

(a)ESGインテグレーションに基づくフェアバリュー >(b)市場の株価 >(c)財務情報のみで算出されたフェアバリュー

 

という位置関係になった場合、(C)の財務情報のみで判断したファンダメンタルズ派は(b)市場の株価が割高に位置していると判断している。一方、(a)ESGインテグレーションで判断した投資家は(b)市場の価格は割安と判断しており、この場合、両者の判断の開きが大きく、積極的にロングポジションを構築するといった具合だ(逆のケースでは積極的にショートする)。

 

■まとめ

世界の機関投資家において、ESG項目やESGインテグレーションの投資手法を取り込む動きが一段と広がることが予想されるなか、教科書的に財務情報(短期の予測を含む)をプライシングモデルに当てはめるファンダメンタルズ派の自然淘汰をα(=投資成果)にしようとするヘッジファンド戦略がはたして機能するのかどうかに今後も注目したい。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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