(※写真はイメージです/PIXTA)

財産を他人へ遺贈したいと思ったら? 行政書士の山田和美氏が、乙野さんの遺言書を例に、相続争いを起こさない遺言書の書き方について解説します。※本連載は、書籍『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

遺留分の侵害で相続争い…寄付を妨げるもう1つの要因

そして、もう1つの懸念事項は遺留分です。

 

一定の相続人には遺留分という、相続人に法律上確保された最低限度の財産保証があり、遺留分を侵害した遺言書はトラブルのもとになります。

 

仮に財産の大部分を寄付する内容の遺言書をつくったとすれば、遺留分の侵害額請求をされる可能性が極めて高いものです。

 

さらに、寄付をした財産の大半が金融資産であればまだよいのですが、大半が不動産など、分けられないものである場合は団体側も対応に苦慮することになりかねません。金額や内容等にもよりますが、団体としても相続争いに巻き込まれてはたまったものではないですから、いくら寄付自体の受入れ体制のある団体であっても、遺留分を大いに侵害しているような寄付は放棄される可能性が高いでしょう。

 

事前の確認が不足していたり、遺留分の考慮が漏れていたりすれば、その想いは実現しません。受入れ体制の確認や遺留分侵害の有無を検討したうえで遺言書を作成してください。

 

なお、遺言書で寄付をする場合には、遺言執行者を選任しておかなければ、その手続きが煩雑になります。寄付をする場合は必ず遺言書のなかで遺言執行者を定めておきましょう。

 

 

山田 和美

なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター(愛知県東海市)所長

 

 

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残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

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山田 和美

日本実業出版社

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