(※写真はイメージです/PIXTA)

お金なくして生活していくことはできません。でも、お金について実はよく知らない人も多いのではないでしょうか。たとえば「日本円が安全資産と言われてきたワケは?」「通貨名にドルがつく国が多いのはなぜ?」と聞かれたら、答えられますか。ここでは世界三大通貨の知識・雑学をご紹介します。※本連載は、大村博氏の著書『Q&Aでサクサクわかる 金融の世界』(ビジネス教育出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

通貨名「ドル」の起源は、まさかのチェコ

Q2.「単にドルといえば、世界の基軸通貨である米ドルを指します。このドルという呼称は、米国の母国である英国と関係があるのでしょうか?」

 

⇒A. ドルという呼称の源は、米国でも英国でもありません。ドルの母国はチェコです。同国のボヘミアにある鉱山の町、サンクト・ヨアヒムスタールにあります。

チェコ産の良質な貨幣「ターラー」が世界各地に普及

<解説1>ドルの母国はボヘミア

 

16世紀初め、ボヘミア(現在のチェコ)のザンクト・ヨアヒムスタール(現在のヤーヒモフ)で銀山が発見され、その地で銀貨が鋳造されるようなりました。当初、鋳造された銀貨は、「ヨアヒムスターラー(JOACHIMSTHALER)」と呼ばれていましたが、ほどなくして「ターラー(THALER、TALER)」と短縮して呼ばれるようになります。

 

この「ターラー」は大型で見栄えが良く、品位もあったため、銀貨にもかかわらず金貨と等価に扱われました。そのため16世紀後半には、ドイツやオーストリアでも造られるようになり、ヨーロッパ規模での商業圏の拡大と相まって、広く普及するようになりました。

 

もちろん呼称は国ごとに違い、たとえば、オランダでは「ダアルダー(DAALDER)」、英国では「ダラー(DOLLAR)」と呼ばれました。

 

ターラーは、もともと品質の良さで知られた銀貨です。それがヨーロッパで広く普及するようになったことで、ターラーは「良質な貨幣」の代名詞となり、それが英国の植民地だった米国をはじめ世界各地に渡って「良貨」の意味を込め、自国通貨を「ダラー(日本語ではドル)」と呼ぶようになったのです。

 

ちなみに日本では、江戸時代に長崎の出島を通じて「DOLLAR」が伝わりました。当時は、そのまま「ドルラル」読んでいましたが、明治時代に入ってから「ドル」と省略され、現在に至っています。

 

現在、通貨単位として良貨の意味を持つ「ドル」を使用している国は数え切れません。米国(アメリカ合衆国)はもちろんですが、ほかにも多くの国が、ドルを通貨名として採用しています。

 

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【ドルを通貨名としている国】

カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港、台湾、ブルネイ、フィジー、ジャマイカ、バハマ、バミューダ、トニダード・トバゴ、リベリア、ケイマン諸島、ソロモン諸島、ツバルなど

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<解説2>オーストラリアドル成立の歴史

 

もともとオーストラリアは、母国である英国の通貨を中心としたポンド(POUND)通貨圏に属し、為替相場も英ポンドに連動していましたが1965年、当時のオーストラリアの首相が通貨の名称(通貨単位)を「ロイヤル(ROYAL)」にしたいと提案しました。ほかにも様々な名称案がありましたが、首相の一存により「ロイヤル」となり、オーストラリア準備銀行(中央銀行)は紙幣と硬貨の準備に入りました。しかし、なお国民の不満は強く、急遽「ダラー(ドル)」と名付けることになったのです。

 

そして1966年、それまでの1オーストラリアポンドにつき2オーストラリアドルとする為替レートが公示されました。さらに1967年、英国が米ドルに対して英ポンドの切り下げを行った際、オーストラリアはオーストラリアドルを英ポンドに連動させる政策を取りませんでした。こうしてオーストラリアはポンド通貨圏から離脱し、ドル通貨圏に入り、現在のオーストラリアドルに至っています。

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Q&Aでサクサクわかる 金融の世界

Q&Aでサクサクわかる 金融の世界

大村 博

ビジネス教育出版社

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