3―属性別に見たワクチン接種後にやりたいこと
1.性年代別~女性やシニアで期待感が強い、若者は外食やレジャーが多いが接種しないも多い
性別に見ると、男女とも圧倒的に多いのは全体と同様「国内旅行」であり半数を超える[図表2]。次いで、男性は「外食」(32.7%)、「友人と会う」(27.5%)、「飲み会・会食」(23.9%)、女性は「友人と会う」(45.6%)、「外食」(40.8%)、「店舗でのショッピング」(35.2%)と続く。
男女を比べると「飲み会・会食」や「スポーツ観戦」を除く全ての消費行動で女性が男性を上回り、特に「友人と会う」(女性が男性より+18.1%pt)や「店舗でのショッピング」(+15.4%pt)、「帰省・離れて暮らす家族と会う」(+12.8%pt)、「舞台やコンサート、ライブ鑑賞」(+11.0%pt)で高い。なお、これらは女性では全体と比べても高い一方、男性では低い。
年代別に見ても、いずれも圧倒的に多いのは「国内旅行」であり、5~6割を占める。また、20歳代で「外食」(全体より+5.0%pt)、若い年代ほど「遊園地など屋外レジャー施設の利用」(20歳代で+10.4%pt、30歳代で+6.3%pt)、70歳代で「店舗でのショッピング」(+12.5%pt)や「国内旅行」(+12.2%pt)、「帰省・離れて暮らす家族と会う」(+8.1%pt)、「友人と会う」(+7.6%pt)が高い。
なお、70歳代では「遊園地など屋外レジャー施設の利用」や「舞台やコンサート、ライブ鑑賞」を除く消費行動で全体を上回り、ワクチン接種後の期待感が強い様子がうかがえる。また、60歳代でも全体を上回る項目が多い。感染による重篤化リスクの高い高齢層では、コロナ禍で外出自粛傾向が強いために、ワクチン接種後の期待感が強いようだ。
一方、重篤化リスクの低い20歳代では「ワクチン接種を考えていない」(12.7%、全体より+5.5%pt)が高い。
2.ライフステージ別~子育て世帯で旅行やレジャー、第一子誕生や大学生のいる世帯で帰省が多い
ライフステージ別に見ても、いずれも圧倒的に多いのは「国内旅行」であり、4~6割を占める[図表3]。なお「国内旅行」は第一子誕生以降の子育て世帯で高い傾向がある。また、「遊園地などの屋外レジャー施設の利用」も子育て世帯で高く、子どもの年齢が低いほど高い。
昨年の夏休みはコロナ禍による休校期間が長引いたために短縮され、感染再拡大によって帰省自粛が呼びかけられた。子ども達にも我慢を強いる生活が続く中で、ワクチン接種後には旅行やレジャーで楽しませてあげたいという親の気持ちが透けて見えるようだ。
また、第一子誕生や孫誕生、第一子大学入学で「帰省・離れて暮らす家族と会う」が高い。コロナ禍で帰省が自粛されてきた中で、生まれたばかりの子どもと祖父母の対面も控えられ、大学生の実家への帰省もままならない状況があったが、ワクチン接種によって希望の光が見えてきたようだ。
3.世帯年収別~世帯年収1,000万円付近を中心に消費意欲旺盛、海外旅行も全体の2倍
世帯年収別に見ると、世帯年収によらず最も多いのは「国内旅行」だが、低所得世帯ではその割合は低く、世帯年収200万円未満では3割台であり、「外食」と大きくは変わらない[図表4]。なお、世帯年収200万円未満では全体を下回る項目が多く、「特にない」(20.1%)も高い。
一方、世帯年収600万円~1,500万円未満では「国内旅行」が6割程度を占めて高い。また、世帯年収1,000万円付近を中心に全体を上回る項目が目立ち、消費意欲が旺盛な様子がうかがえる。特に「海外旅行」は全体では16.3%にとどまるが、世帯年収1,000万円付近では約2倍を占めて高いことも特徴的だ。
4.ワクチン接種状況・意向別~接種完了や間近な層、積極層で国内旅行が高い
ワクチン接種状況・意向別に見ると、「絶対に接種したくない」を除く全てで「国内旅行」が圧倒的に多い[図表5]。特に、接種完了および完了間近な層、接種に積極的な層では約6割を占めて高い。
また、これらの層では多くの項目で全体を少しずつ上回る。ただし、世帯年収別やライフステージ別に見た結果ほど顕著ではないため、ワクチン接種後の消費行動は、経済的な余裕や子どもがいるなど家庭の環境による影響が大きいと見られる。なお、二回目接種完了では「遊園地などの屋外レジャー施設の利用」が低いが、60歳以上が多くを占めるためと考えられる(63.8%)。
一方、接種に消極的な層では全体を下回る項目が多い。
4―おわりに~自粛している外出行動再開の一方、変異種の懸念で様子見も。引き続き調査で注目。
調査では「その他」の選択肢にて自由記述の回答も得ている。その中には「カラオケ」や「ボランティア」、「自由に行動する」など、コロナ禍で自粛している選択肢以外の外出行動の再開のほか、「変異株の懸念があるために様子見」との慎重な見方もあった。現在のワクチン接種が進むことで、感染不安が緩和され、消費行動は活発化していくと見られるが、それはどの程度の水準で、いつまで続くものなのか。
また、消費者層によって、意識や行動においてどのような違いが生じるのか。ニッセイ基礎研究所では3ヵ月置きに調査を実施しており、引き続き注目していく予定だ。
久我 尚子
ニッセイ基礎研究所
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