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相続税がかかることはわかった、しかしその後が…
筆者は、村田さんが持参した書類を拝見し、また、自宅不動産などの調査も行いました。すると、自宅は約2000万円、預貯金と有価証券を合わせると、相続税の納税が必要な額となります。
「確認した範囲ですと、財産は約7000万円になりますね。相続税の基礎控除も超えてしまいますから、何らかの対策が必要です。5000万円の金融資産を活用して、生命保険に加入するほか、不動産の購入やお孫さんへの贈与なども検討してはどうでしょうか?」
打ち合わせの席についていた村田さん姉妹は、浮かない表情です。
「父が私たちに節税対策を任せてくれるなんて、とても想像できません…。話を持ち掛けたところで、〈自分の財産は死ぬまで渡さない〉といわれておしまいになる気がします」
村田さん姉妹は、父親の性格からすべてをオープンにしたり、人に託したりすることは考えられないというのです。
相続対策は「ほかでもない父親のため」だと強調して
そこで筆者は村田さん姉妹に、これを機会に対策をすれば、相続税も節税でき、父親の老後をサポートするための対策や将来の財産管理もしやすくなると、娘の立場から父親に腹を割って話したほうがいいとアドバイスしました。
「たしかに、老後のサポートをするためとして切り出せば、父の受け止め方も違うかもしれません。うかがったアドバイスを踏まえて、父に話してみます。現状のままでは数百万円の相続税がかかってくると伝えれば、父の考えも変わるかもしれません」
相続税の生前対策には、本人の意思確認が不可欠です。子どもを警戒して財産を言いたがらない親は少なくありませんが、本人の意思や気持ちにじっくりと耳を傾けることで安心してもらうとともに、親を中心とした「老後のサポート」をする気持ちを伝えるようにしましょう。
話し合いにおいて強調すべきは「相続対策は親のためで、子どものためではない」点です。そして、親の気持ちを聞くことを優先しましょう。これは、多くの現場を踏んできた著者からのアドバイスです。
相続税がかかる場合は、具体的な金額を伝えることで、危機感を持ってもらうことも有効です。親への配慮を伝えることで親子間の距離を縮め、信頼関係を再構築してもらうことで、相続対策への道が開けます。
村田さん姉妹と父親との今後の話し合いを見守る必要があります。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。