東大合格に「読書」は不可欠…スマホ世代に本を読ませるには?【元・灘校名物教師が解説】

東大合格に「読書」は不可欠…スマホ世代に本を読ませるには?【元・灘校名物教師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

受験生から「キムタツ」の愛称で親しまれる筆者は、かつて英語教諭として灘校や西大和学園に勤め、500人以上の教え子を東大に合格させました。筆者は、勉強するにも仕事するにも土台は「読むこと」であり、比較的早い段階から「読む力」を身につけておくことが極めて重要であると語ります。筆者はどのようにして生徒たちの「読む力」を育てたのでしょうか? ※本連載は、木村達哉氏の著書『「東大に入る子」が実践する勉強の真実』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

勉強も仕事も「読む力」が不可欠だが…活字離れが深刻

東京大学だけでなく、他の大学にしても、さらに言えば高校入試や中学入試にしてもそうですが、勉強の土台は常に「読む」ということです。大学に入ったあとも書物や論文を読めねば研究になりませんし、ついでに言えば働き出したあとも(仕事にもよりますが)読む力のない人が成功する可能性は低いのではないでしょうか。

 

読む力を比較的早い段階から身につけておくことは極めて重要です。読む力というと国語や英語を思い浮かべる人が多いのではないかと思いますが、それらの教科だけでなく、数学(算数)や理科や地歴公民であっても、かなり長い文章を読んで問題に答えることが求められます。そもそも文章を読んで理解できる力がない子の場合、いくらドリル的な勉強をしたとしても、いくら過去問などを反復したとしても、成績を上げることは不可能だと言えます。

 

我が子に本を読んでもらいたいと願う親や生徒に読書を勧めている先生はたくさんいますが、子どもたちは「本を読みなさい」と言っても読みません。

 

そりゃこれだけスマホが世界中を席巻(せっけん)している現在、文章を読むような知的作業に勤(いそ)しもうとする人は、子どもだけでなく大人も少ないのが現状です。「最近の子どもは本を読まない」と愚痴を言う大人は多いですが、大人も本を読みません。その証拠に大人向けで売れているものはダイエットや健康に関する一部の本だけだと、書店さんに行くと担当の方がこぼしておられます。

読書しない親が「読書しなさい」と言っても説得力ゼロ

子どもたちに本を読ませたい。でも読まない。ならばどうするか?

 

いろいろと工夫しなければなりませんね。まずは家の中に本棚を置くことです。スペースの問題はあると思いますが、本が手元にある状態を作っておかなければいけません。目に見える場所に本がないのに、わざわざ本を読もうという気持ちにはなりません。まずはそれが第一歩です。

 

次に大事なことは大人が読む姿を見せることです。そしてその本を子どもと共有することです。

 

我が家は子どもがまだ小さい頃、家族共有の読書ノートを作って、家族それぞれが読んだ本の感想を、一冊のノートに記録していました。本を読んだら、自分の名前、タイトル、出版社名と、一行だけ好きなことを書きます。一行の部分は感想でも、どういう本かの説明でもいいのです。読書感想文を強要すると、読書自体が嫌になりますしね。「最後のエピソードに感動した」「世界をカヌーで旅する男の話がよかった」などでいいのです。親が読んだ本のタイトルを見て、「いつか読んでみようかな」「親はこんな風に思ったんだ」という発見があり、読書への関心につながっていきます。

 

また、家族でご飯を食べているときなどに、子どもに向かって「前に読んでいた本、面白そう。どんな内容なん?」などと話題をふってみます。そこから会話が広がりますし、子どもが本の内容を紹介する良いきっかけにもなります。「お父さんも読んでみようかな」となれば、子どもは喜びます。

 

子どもは「やりなさい」じゃなくて、「親も読書をしているんだな」という点を見ていますし、実際にしている姿を見せるほうが印象に残ります。

 

ちなみに子どもの感想文を読んでいて、幼稚だなと思うこともあるでしょう。それであれば、親の目線で書き方を教えてあげればいいと思います。感想はこう書けば他の人に伝わりやすいんだなとわかり、自分の文章が伝わったという成功体験があれば、その後は自分でできるようになります。

 

新聞であれ、本であれ、大人が読んでいない家庭では子どもも読みません。まずは大人が読んでいる姿を見せること、そしてその内容を共有しようとすることから始められてみてはいかがでしょうか。

今の時代、灘校生もここまでしないと読書しない

英語を長年教えてきて感じるのが、そもそも日本語の文章を読めない子がかなり多くなってきたということです。日本語の文章も読めないのに、外国語で書かれた文章が読めるわけがありません。「英語の長文が苦手です」という生徒がいますが、「そもそも日本語の長文だったら読めるのか?」と聞くと言葉に窮しています。自分は日本語を話せるから日本語ならできると思っているのですね。話すのと読むのとはまったくの別物です。

 

第二言語の力が、母国語の力を超えることはまずないのです。日本語のレベルが低ければ、いくら英単語や英熟語を覚えても英語の力は日本語のレベル以上になりません。

 

そこで私は、英語の教員ですが、生徒たちに日本語の推薦図書を記したプリントを毎月配付しています(【⇒画像:元・灘校名物教師キムタツの「オススメ書籍」5選】)。

 

私が読んで面白かった本のタイトルとコラムが書いてあります。小説もあれば、エッセイやノンフィクションもあります。受験に直接的に関係するものではありません。また、強制ではありませんので、そのプリントを見て本を実際に読む生徒もいれば読まない生徒もいます。

 

読んだ生徒には、自分の名前と本のタイトル、著者または私への手紙を書いてもらっています。そして校内の専用ポストに投函(とうかん)してもらっています。生徒たちは、「主人公には共感できました」「木村先生の推薦図書にしては、ロマンチックでしたね」「長くて途中で挫折(ざせつ)しました、すみません!」などと書いてきます。読書感想文を強制すると読書がつまらなくなり、ますます読まなくなります。でも、手紙なら書けます。

 

生徒からの手紙には、「読んでくれてありがとう。推薦した甲斐(かい)がありました」などという返事を書いて渡します。

 

今の時代、本を読む環境は、そこまで働きかけないと作れないと思っています。それに本は子どもたちにとって、意外と高額商品ですしね。私が読んだものを生徒たちと共有し、そこから派生した話を楽しめると他の本も読み始めますし、その話を聞いている他の生徒たちも読み始めるというものなのです。

 

私の取り組みを親がやるとどうなるでしょう。おそらく家庭に置かれる本の数がどんどん増えていくのではないかと思うのです。

子どもに読書させるには「大人の働きかけ」が必要

本を読む力、文章を読む力がないと、英語や数学の勉強は言うまでもなく(つまり大学に入れないだけでなく)社会に出てからも困りますし、そもそも読めない人が深く考えることなどできるようにはなりません。物事を論理的に考えるためには、仮説を立て、資料を読み、検証することが必要です。論理的に考えない人の場合、感性だけで生きることになります。それでいいのであればいいのですが、本稿を読んでおられる皆さんのお子さんにはそうであってほしくありません。しっかりと考える力を身につけ、東大をはじめとする大学を経て、他者のために社会のために役に立つ人材に育ってほしいと願っています。

 

私の知り合いで書店営業の会社を経営されているSさんという方がおられます。その方とゴルフをしているときに「どうすれば娘が本を読む子になるだろうか」と相談を受けました。私の家や灘校での取り組みを説明し、実際に生徒たちに配付している先ほどの私のコラムを見てもらいました。

 

また、紀伊國屋(きのくにや)書店梅田本店の店長さんが私のリストとコラムをご覧になり、是非ともここに掲載されている本の本棚を作りたいと仰ってくださいました。結果的に、Sさんの娘さんは100冊以上の本を読むことになり、紀伊國屋書店梅田本店さんではその本棚に多くの方々がお越しになり、極めてたくさんの本をレジへと持っていかれたそうです。

 

私は自分のホームページで本を紹介し続けています。私が紹介した本を子どもたちと一緒に読んでみられてもいいかと思いますが、たとえば親が読んだ本をこのような形でリストアップされてはいかがでしょう。ワードやエクセルがあれば、すぐに作れますし、データ化しておいて、今までの人生でどういう本を読んだのかを記録するのも一つのモチベーションになるのではないでしょうか。

 

再度書きますが、本を読む環境は、大人が働きかけないと作れない時代になっています。私の取り組みが参考になれば嬉しく思います。

 

 

木村 達哉

作家、元英語教諭

灘校と西大和学園で教え子500人以上を東大合格させたキムタツの「東大に入る子」が実践する勉強の真実

灘校と西大和学園で教え子500人以上を東大合格させたキムタツの「東大に入る子」が実践する勉強の真実

木村 達哉

KADOKAWA

30年を超える指導経験で分かった、東大合格者を出す家庭の共通点とは? 勉強の意味を知り、正しい勉強のやり方を知っていれば、どんな子でも東大は合格できる! 難関大学合格のために欠かせない「勉強体質」を家庭でいか…

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