「ゴルフ」がきっかけで「ウォーキング」に
しかし、いまは違います。
50代から役職定年で給料は右肩下がり、定年後は再雇用でその給料も半減します。
終身雇用は崩壊し、退職金の額も減ってきています。さらに「人生100年時代」といわれるように、急速に平均寿命が延びています。
経済的な人生設計の大半を、企業が賄ってくれた時代はもう終わりました。自らの設計は自己責任においてすべきなのです。定年後も会社が面倒を見てくれると勘違いしているから、思考停止に陥ってしまうのかもしれません。その考えを早めに払拭することが必要です。定年後に生きがいを見つけないと、本当に「孤独な人生」になってしまいます。
ご参考までに、定年後の生き方の一例として、筆者(長尾)の父の話を紹介します。
父は63歳のとき、長年勤めた電力会社のグループ会社を退職。その後、趣味のゴルフを上達させたいという理由で歩き始めました。そこでウォーキングの魅力に目覚め、地元のウォーキンググループ「百歩会」を立ち上げます。
以来、その会の会長や事務局長を務め、毎月の定例会(ウォーキング)も一度も休むことなく参加してきました。
県内の神社仏閣や自然コースをはじめ、しまなみ街道の一部を歩くといった催しを次々と企画し、県のウォーキング協会の役員、市の老人クラブ連合会の常任理事も務めました。
みんなに喜んでもらえるのが「楽しみだな」と、意欲的に活動してきたのです。そして、その功績が認められ、88歳になった2015年、内閣府よりエイジレス・ライフの実践者として表彰されました。
2020年で94歳になっていますが、介護認定もまったく受けずに元気で暮らしています。あまりに元気で、いまも自転車に乗って買い物に出かけているので、子どもたちはヒヤヒヤものです。
さすがに歩く距離は落ち、「1日3000歩くらいしか歩けない」などとぼやいていますが、年齢を考えれば驚くばかりです。
父の場合は、定年前にやっていた「ゴルフ」がきっかけで「ウォーキング」に出会いました。定年後の楽しみは、何がきっかけで見つかるかわかりません。
「ウォーキング」をとおして社会とのつながりをもちつづけ、それが健康維持にもつながり、なによりも「たくさんの人に喜んでもらえる」ことが生きがいにつながったのでしょう。
人が強い幸福を感じるのは「誰かが喜んでいるのを見たとき」であることが、脳科学でもわかっています。そう考えると、父はまさに幸せな生き方を見つけることができたのだと思います。
長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員
福岡 武彦
1株式会社ライフエレメンツ代表取締役
税理士