年金の受給開始年齢、70歳になる日も遠くない
また年金受給開始年齢ですが、筆者は今から10年後の2031年4月から「70歳受給開始に向けた移行措置」が開始されると予測しています。
対象は、1965年4月2日から1966年4月1日の間に生まれた学年(2021年1月現在で55歳または54歳)の男性です。
この学年の男性は66歳受給開始になるという予測です。
女性はその5年後からになります(65歳受給開始への移行措置と同じ)。
誤解のないように明記しておきますが、これはあくまでも筆者個人の予測であり、厚生労働省からは何ら発表はありません。
また筆者が秘密の資料を入手したということも一切ありません。では、その根拠は何か。根拠は次の2点です。
年金受給開始年齢60歳から65歳への移行と同じプロセスを経て、70歳へ移行するのではないかと筆者が見ていることが一つ。
そしてもう一つは、少子高齢化が加速している現状(平均寿命は延び続け、少子化が国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口の数値を超えて進んでいる、すなわち出生者数が減少している)から考えて、65歳受給開始では年金財政が持たないと考えられることです。
新型コロナウイルス感染症拡大による大規模な補正予算と、その財源をすべて国債発行でまかなったことを考えると、日本の財政は今後さらに厳しくなると見られ、コロナ不況が長期化することになれば(その可能性は高い)、筆者が予測したタイミングでは間に合わず、70歳受給開始への移行はもっと早まる可能性すらあります。
いずれにしても、70歳年金受給開始は不可避の流れであり、だからこそ多くの会社員が「70歳定年制」=「70歳年金受給開始」と受け止め、ネガティブな反応になっているのです。
しかも、年金受給額も「マクロ経済スライド」(物価上昇分まで年金の受給額は上がらず、人口構成の歪みの調整に充当する仕組み)により、現役時代の収入に対する年金受給額の割合(これを「所得代替率」と言います)が年々下がっていき生活が苦しくなる、と感じているのです。
そうなると、年金受給年齢が65歳の現在、ほとんどの会社員が「定年再雇用」を選択して65歳まで同じ会社で働き続けているのと同様の行動、すなわち年金受給年齢70歳までの間、「定年再々雇用」で、70歳まで同じ会社で働くことをイメージして、大きな不安に駆られているのだと筆者は解釈しています。
65歳以降、年収が1/4以下になる可能性も
「定年再々雇用」と敢えて書いたのは、60歳からの定年再雇用で、現役時代の半分くらい(年収が高い人ほど減額率は大きい)になった年収が、65歳からはさらに半減するくらいのインパクトで年収ダウンになるのではないかと筆者は予測しています。
なぜなら業績が厳しい企業としては、新入社員よりも年収レベルを下げないと定年退職者の雇用を維持していくことが難しいと思うからです。
但し、健康面や体力面の負担も考慮し、勤務時間や勤務日数を減らす方向で勤務条件の改定を行うでしょう。
そうなると年収半減(現役時代最後の年収の四分の一)では済まないかも知れません。
それでもPCスキルの問題などで在宅勤務がうまくできない定年退職者は「再々雇用」ですら難しくなります。
間もなく施行される「70歳就業確保法」では、これまでになかった、「業務委託による起業支援」や「社会貢献活動への支援」という選択肢を企業に用意しています。
これに「転職支援」を加えた「定年再雇用」以外の働き方を、できれば60歳定年時によく考えるべき、というのが筆者の提案です。
同じ会社で働き続ける「定年再雇用」というのは一見、働く環境が変わらずリスクの低い選択に思えるのですが、65歳以降も働くことを考えると選択肢が狭まり、実は最もリスクの高い選択になるかも知れません。これを筆者は「定年再雇用のワナ」と呼んでいます。
大杉 潤
経営コンサルタント
ビジネス書作家
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