(※画像はイメージです/PIXTA)

年金受給開始年齢の先送りが現実のものとなろうとしています。まだ先の話だと思っている人も、その状況を踏まえてライフプランを立てる必要があります。メガバンク勤務のち新銀行東京の創業メンバーとして活躍、その後多くの企業の責任者を歴任してきた著者が、新しい働き方を提唱します。※本記事は、大杉潤氏の著書『定年起業を始めるならこの1冊! 定年ひとり起業』(自由国民社)より一部を抜粋・再編集したものです。

平均寿命の延びに対応しきれない「定年」と「年金」

かつて「人生70年」と言われた1970年頃は、日本人男性の平均寿命は69歳、女性は74歳でした。

 

その時の定年が55歳、年金受給開始年齢が60歳でした。

 

それから50年間で男女とも平均寿命は10年以上延びていますが、現在は定年が60歳、定年再雇用で65歳になり、年金受給開始は60歳から65歳へ移行している最中です。

 

(出典)日本年金機構の資料をもとに筆者作成
[図表1]年金受給開始年齢65歳への移行スキーム (出典)日本年金機構の資料をもとに筆者作成

 

そういう意味では、日本人の平均寿命が50年間で男性は12年、女性は13年も延びているのに、定年は再雇用を入れても10年しか延びていません。

 

年金受給開始年齢にいたってはわずか5年延びただけ。

 

しかも2025年4月にやっと男性のみ、65歳への移行措置が終わり、1961年4月2日以降に生まれた人から原則、65歳からの年金受給になります(女性はさらに5年後になります)。

 

ここで「原則」と書いたのは、65歳年金受給開始であっても、5年繰り上げから10年繰り下げまで(60歳〜75歳)の間で選択できる制度になっているからです。

 

但し、5年繰り上げて60歳から受給したら30%減額、逆に10年繰り下げて75歳から受給とすれば84%増額になります。

 

年金受給開始年齢の引き上げは、国民の関心が高く、直ちに政治問題化するセンシティブなテーマなので、政治家も官僚も、うかつに発言できません。

 

ただ、真剣に、誠実に、真摯に国家の運営と国民の幸福を考えるのであれば、できるだけ早く方向を示してあげることが国家のリーダーの役割なのではないかと筆者は思います。

年金財政は危機的状況…破綻を防ぐ方法は3つしかない

ここまで述べてきた通り、日本人の平均寿命が12〜13年も延びて、年金受給開始年齢が5年しか延びていなければ、年金制度を今のまま維持することは不可能です。それができるのは労働人口(年金保険料を支払う人口)が増え続けている時期だけです。

 

日本は労働人口が減り始め、今後は減少が加速します。

 

平均寿命はまだ延び続けているので、年金受給者は当面、大きくは減りません。

 

ならば、年金財政を破綻させないように運営する手段は以下の3つしかありません。

 

1.年金保険料を上げる(収入を増やす)

2.年金支給額を下げる(支出を減らす)

3.年金支給開始年齢を引き上げる(年金受給を70歳からにする)

 

実際には、これら3つの手段を総動員しないと、日本の年金財政は破綻し、年金制度は持続可能にならないと筆者は考えています。

 

そのくらい、今後の年金財政は大きく悪化していきます。

 

この中で最も効果が高く、年金制度維持のカギとなるのが3番目の「年金支給開始年齢の引き上げ」(受給者から言えば「年金受給年齢の引き上げ」)です。

 

1番目の年金保険料引き上げは、これ以上、現役世代の負担を増やすと将来受給できる年金額との兼ね合いから年金制度の信頼性が損なわれてしまうリスクがあります。また、実際に預貯金額の多くは65歳以上の高齢者が持っている現状から考えても現役世代に、これ以上の負担力はないでしょう。

 

2番目の年金支給額の引き下げは、「年金生活者切り捨て」と批判されるため現実には不可能で、現在のやり方は、物価上昇分をすべて年金には反映させず、一部は人口構成の歪み(年金保険料支払者と年金受給者の人口比の変化)を是正するものとして使うという「マクロ経済スライド」という仕組みで、実質ベースで年金受給額を下げるという方策です。

 

それでも現役時代の所得に対して50%の年金所得を確保するという「所得代替率50%」を下限とする方針を打ち出していますので、限界があるでしょう。

 

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定年起業を始めるならこの1冊! 定年ひとり起業

定年起業を始めるならこの1冊! 定年ひとり起業

大杉 潤

自由国民社

定年後の不安であるお金の問題に、定年後にひとりで起業した著者が答えます。 年金+アルファの収入を得るには楽しいことで、稼いでいくことが一番。そして、年金という収入が保証されている60代こそリスクのない「ひとり」…

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