Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

現代アートを構成する三大要素とは

インパクト、コンセプト、レイヤー

 

現代アートのジャーナリストで世界の現代アート事情をよく知る小崎哲哉は、『現代アートとは何か』(河出書房新社)の中で、現代アーティストの杉本博司へのインタビューをもとにして、「現代アートの三大要素」を次のようにまとめています。

 

杉本はアートを見る上で、「視覚的にある強いものが存在し、その中に思考的な要素が重層的に入っている」ということが大事だと語ったそうです。「視覚的にある強いもの」「思考的な要素」「重層的」を小崎なりに受けとめて、それを「インパクト」「コンセプト」「レイヤー」という言葉にして、現代アートを構成する三大要素と定義しました。

 

現代アートは「視覚的にある強いものが存在し、その中に思考的な要素が重層的に入っている」ということが大事だという。(※写真はイメージです/PIXTA)
現代アートは「視覚的にある強いものが存在し、その中に思考的な要素が重層的に入っている」ということが大事だという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

この見方は理にかなっていて、ほぼ、どの作品にも当てはまる見方の基準になるでしょう。

 

一つ目の「インパクト」ですが、作品の見た目は、何か人と違ったオリジナリティや個性がなければならないでしょう。極端に大きい、小さい、硬い、柔らかい、きれい、きたない、奇妙、くさいなど、何でもいいので、人と違ったインパクトが必要です。

 

「インパクト」は何も外見だけではありません。コンセプトや作家の意表をついた行動であったり、発言であったりしてもいいのです。

 

二つ目の「コンセプト」です。どんな考えによってこの作品は成り立っているのか。何がメッセージなのか。これが作品の命ともいえるところです。

 

現代アートは、社会に起きることであれば、どんなことでも作品にしてしまいます。それは個々の作品レベルでも現代アート全般においてもそうなので、この作品はいったい何をテーマにして何にフォーカスしているのかを鑑賞するときに明確にしないと訳がわからなくなります。

 

ただでさえ何でもありのカオスな状況を呈するのが現代アートなのですから、作品の背景や文脈を押さえきれないと手に負えないものになります。

 

三つ目は「レイヤー」です。いい作品はいくつもの解釈が可能ということです。異なった意味の層が存在し、異なった解釈が可能なのです。

 

ダダイズムには「ものと意味との乖離」があると言いましたが、そうなったおかげで、イメージや意味を自由に加えていくことができるようになりました。アートの場におけるものは、単なるものではなく特別な意味をまとっているのです。

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アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられている。 現代アートが提起する問題や描く世界観が、ビジネスエリートに求められ…

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