(※写真はイメージです/PIXTA)

患者を集めるために、広告やセールスプロモーション、ホームページなどマーケティングにお金をかけている医院も多いでしょう。しかし、お金がかかるものだけがマーケティングではありません。接客態度や電話応対の向上なども重要なマーケティングであり、こうした当たり前のことこそが最大の差別化に繋がることをご存じでしょうか。5年間で25医院を開業した歯科院長が、千客万来の秘訣を紹介します。

「カルテに書かない情報」こそ診療のヒント

カルテ以外にB5の白紙を用意していて、なんでもいいからそこに情報を書くようにしています。あえて内容は問いません。

 

例えば、会話のなかで、「私、今日、マツエクつけに行ったの」と言われたとすれば、それを書きます。日付とともにそういう話題を書くわけです。つまり、このB5の紙にはカルテでは書けないこと、書かないことが書いてあるわけです。玉石混交ですが、なかには貴重な情報も含まれています。

 

例えば、しばらく来院されなかった方が半年後に来院されたときに、それを見れば、前回話した内容が分かる。それが話の接ぎ穂になるわけです。来院を重ねていただければ、それだけ情報がたまります。

 

主にその用紙に記入するのは担当した衛生士ですが、当初はその患者さんの名前を覚えるために、自分が担当した患者さん全員の特徴を書くということを習慣化しています。新しく入った人には、どんなに忙しくても何か一つは書くよう指示しています。名前と顔を覚えたうえで、その人の特徴を覚えます。家族構成なども会話の引き出しになります。

 

 

患者さんは、自分はこの場所で特別だと思いたいものです。自分のことを分かっていてほしいのです。多くの患者さんは、前回付いてくれた衛生士さんの感じが良かったら、またその人に担当してほしいと内心思うものです。その希望を口に出す人もいます。そこで、その人が担当しない場合でも、代わりに付いた衛生士が自分のことをよく知っていれば、気分がいいものです。安心するものです。だからもちろん、この用紙の情報は皆で共有します。

 

患者さんの情報は常に重要です。私たちの医院には、昼休みにただ遊びに来る人もいます。そうした場合も時間があれば話をして、やはり、そこで得た情報は書き留めるようにしています。

「患者と医師」より「患者とスタッフ」の関係性が大切

患者さん一人ひとりとの関係をつくることが大切ですが、その役割はドクターよりもむしろ、他のスタッフの役目だと私は思っています。

 

「患者さん一人ひとりとの関係をつくる」というのは、歯科医院の常識ではドクターが行う行為とされています。私の考えは違います。ドクターよりもむしろ、受付や衛生士など、ドクター以外のスタッフ全員がそれぞれの患者さんとの関係性をつくってほしいのです。つまり、10人のスタッフがいて、患者さんが100人いたとすれば、1000通りの関係性ができるわけです。その総和が患者さんとその医院との関係性になります。そのためのB5の白紙でもあるのです。

 

スタッフは、ドクターのために何かをするのではなく、それぞれの患者さんのために動かなくてはいけません。脇役はいらないのです。そこが組織づくりの最大のポイントです。

 

 

すべては役割分担です。もちろん、責任者はドクターが担うというのが基本ですが、衛生士には衛生士、受付には受付にしかできない役割がたくさんありますから、それぞれ関わる人がその役割を通じて、患者さんとの関係をつくってもらわなくてはいけないのです。

 

そうなれば、例えばある患者さんがその日、ドクターである私との間にちょっとしたわだかまりができてしまったとしても、衛生士さんが救いになったりするわけです。診療室の中では気分が好転しなかったとしても、最後に受付でいい気分になってもらえればいいわけです。そうしたフォローアップもそれぞれができるようになるはずです。

関係づくりができてこそ「患者想いのスタッフ」になる

歯科医院の場合は特にそうですが、初めてその医院に足を踏み入れた患者さんは、誰がドクターで、誰が衛生士なのかは分からないものです。衛生士が受付を兼ねる場合もあります。そうなると患者さんが何か聞きたいことがある場合は、瞬間的に自分が聞きやすいと思った人に質問します。そのときに、聞かれたスタッフが何も答えられないでは困ります。誰もがフロントに立つ、その医院の代表であるということを自覚してもらわなくては困ります。

 

もっともこうした面は、もしかしたらドクターがいちばん苦手なことかもしれません。ただ、ドクターは必ず患者さん一人ひとりに接します。患者さんを診察し、治療をするわけですから当然です。そこは、スタッフがどう頑張っても、ドクターにしかできないことですから、スタッフはその他の面でドクターをサポートする役割であるわけです。

 

ただ、いちばん言いたいことは、その際に指示待ちではいけないということです。あるいはいくら慣れていて、指示を待たずに流れ作業でできたとしても、それだけでは患者さんから見て、温かみの感じられない動きになってしまう可能性が高いのです。主体的な関係性が必要なのはそうならないためでもあります。

 

 

河野 恭佑

医療法人社団佑健会 理事長

株式会社デンタス 代表取締役社長

 

 

 

 

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※本連載は、河野恭佑氏の著書『歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

河野 恭佑

幻冬舎メディアコンサルティング

コンビニエンスストアを1万軒以上も上回る歯科診療所の施設数。 一方で少子化によって患者は年々減少し、過当競争が激化しています。 年間で1600軒もの施設が廃業し、「大廃業時代」といわれる歯科業界で生き残っていく…

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