「馴合訴訟」による新株発行無効の確定判決に「再審」が認められた理由【弁護士が事例で解説】

「馴合訴訟」による新株発行無効の確定判決に「再審」が認められた理由【弁護士が事例で解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、日本大学教授で弁護士の松嶋隆弘氏の書籍『実例から学ぶ 同族会社法務トラブル解決集』(株式会社ぎょうせい)より一部を抜粋・編集し、「馴合訴訟」による判決に民事訴訟法第338条1項3号の再審事由があると認められた理由を最高裁判所の判決を基に解説します。

新株発行無効の確定判決に「再審」が認められた理由

(1)本Caseは、最決平成25年11月21日民集67巻8号1686頁を素材としたものである。原々審(東京地決平成24年3月30日判時2158号48頁)、原審(東京高決平成24年8月23日判時2158号43頁)は、Xの主張を否定した。ここでは原審の決定要旨を引用しておく。

 

「現行の法体系においては、判決の効力を第三者に対しても及ぼす場合には、当該訴訟の内容を考慮して、詐害判決がされたことを再審事由として認めるかどうかについても当該法律において規定しているのであり、その反面、そのような法律の定めがない場合には、詐害判決であることを独立した再審事由として認めることはできず、したがって、これを民事訴訟法338条1項3号の代理権欠缺に準じた再審事由であると認めることはできないものというべきである。」

 

(2)これに対し、最高裁は、「新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有する」と述べた上で、下記のとおり判示する。

 

「新株発行の無効の訴えは、株式の発行をした株式会社のみが被告適格を有するとされているのであるから(会社法834二)、上記株式会社によって上記訴えに係る訴訟が追行されている以上、上記訴訟の確定判決の効力を受ける第三者が、上記訴訟の係属を知らず、上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかったとしても、直ちに上記確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由があるということはできない。

 

しかし、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならないのであり(民訴法2)、とりわけ、新株発行の無効の訴えの被告適格が与えられた株式会社は、事実上、上記確定判決の効力を受ける第三者に代わって手続に関与するという立場にもあることから、

 

上記株式会社には、上記第三者の利益に配慮し、より一層、信義に従った訴訟活動をすることが求められるところである。そうすると、上記株式会社による訴訟活動がおよそいかなるものであったとしても、上記第三者が後に上記確定判決の効力を一切争うことができないと解することは、手続保障の観点から是認することはできないのであって、

 

上記株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には、上記確定判決には、民訴法338条1項3号の再審事由があるというべきである。」

 

「本件において、Xは、前訴の係属前から、Y1に対して内容証明郵便により本件株式発行の有効性を主張するなどしており、仮に前訴の係属を知れば、自らの権利を守るために前訴に参加するなどしてY2による本件株式発行の無効を求める請求を争うことが明らかな状況にあり、かつ、Y1はそのような状況にあることを十分に認識していたということができる。

 

それにもかかわらず、Y1は、前訴において、Y2の請求を全く争わず、かえって、請求原因事実の追加立証を求める受訴裁判所の訴訟指揮に対し、自ら請求原因事実を裏付ける書証を提出したほか、前訴の係属を知らないXに対して前訴の係属を知らせることが容易であったにもかかわらず、これを知らせなかった。その結果、Xは、前訴に参加するなどして本件株式発行の無効を求める請求を争う機会を逸したものである。

 

このような一連の経緯に鑑みると、前訴におけるY1の訴訟活動は会社法により被告適格を与えられた者によるものとして著しく信義に反しており、Xに前訴判決の効力を及ぼすことは手続保障の観点から看過することができないものとして、前訴判決には民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地があるというべきである。」

 

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