「馴合訴訟」による新株発行無効の確定判決に「再審」が認められた理由【弁護士が事例で解説】

「馴合訴訟」による新株発行無効の確定判決に「再審」が認められた理由【弁護士が事例で解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、日本大学教授で弁護士の松嶋隆弘氏の書籍『実例から学ぶ 同族会社法務トラブル解決集』(株式会社ぎょうせい)より一部を抜粋・編集し、「馴合訴訟」による判決に民事訴訟法第338条1項3号の再審事由があると認められた理由を最高裁判所の判決を基に解説します。

「詐害再審」に対する検討

(1)民事訴訟は、基本的には私人間の私的紛争を解決するものである。このことから訴訟における攻撃防御は、もっぱら各当事者の権能かつ責任に委ねられ、判決の既判力も、原則として当事者間にしか及ばない(民事訴訟法115-1)。

 

ただ、時として、第三者に害を及ぼすべく、意識的に馴合訴訟が行われるという事態も生じうる。かかる事態を避けるため、法は、いくつかの場面で、かかる馴合訴訟に基づいて獲得された確定判決に対し、再審の訴えを設けている(会社法853、特許法172、行政事件訴訟法34)。これを詐害再審という。

 

(2)民事手続に関する一般法である現行民訴法は、詐害再審の規定を置いていない。詐害再審に関する規定は、実は、旧旧民訴法(明治24年法律第29号)には、規定が置かれていたが(旧旧民訴法483)、旧民訴法(大正15年法律第61号)で削除されたものである。現行民訴法の立法過程でも導入が検討されたものの、結局見送られ、現在に至っている。

 

本Caseは、前記諸法が直接規定する場合以外にも、詐害再審と評価すべき場合がありうることを如実に示している。独立当事者参加の形を借りて、再審の訴えを許容する最高裁の立場は、1つの解釈上の便法として支持されるべきであろう。

 

 

松嶋 隆弘

日本大学教授

弁護士

 

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